利他的な生き方 光野桃さんは「新しい日常」をカシミアに託す

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異なる価値観

   プレシャスは小学館の女性ファッション誌、40歳前後のキャリア女性が読者層である。「新名品」の特集は、コロナ禍を受けたニューノーマル(新しい日常)を豊かにするため、どんなものを身に着ければよいかという企画で、編集部のリードにはこうある。

〈外出を控えて静かに立ち止まると、見えてきた世界にはこれまでとは異なる価値観が生まれつつありました。ニューノーマルを生き抜くことに、今は迷いがあるかもしれません。そんなときは深く息を吸い、ゆっくりと身の回りの愛すべきものたちに改めて目をやってみたいと思うのです〉

   特集の冒頭、「今、あなたが心を寄せる『新名品』は、なんですか?」という問いに、光野さんら5人の女性が答えている。他の顔ぶれは、井川遥さん(俳優)雨宮塔子さん(フリーキャスター)田村奈穂さん(プロダクトデザイナー)冨永愛さん(モデル)だ。

   みなさん、コートや腕時計などのアイテムについて語っているが、光野さんのページにのみ「文・光野桃」というクレジットが入っていることから推察すると、他はインタビューを編集部が再構成したものかもしれない。

   光野さんが取り上げたカシミアは、おしゃれアイテムというより素材。なにより、その特性や魅力を「利他」という生き方と結びつけた論旨がユニークだった。

   カシミアはマフラーくらいしか持っていない私だが、そいつをしっかり首に巻いたら、来たる2021年はもう少し優しくなれるだろうか。

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当コラムは連載150回となりました。年替わりの区切りでもあり、これまでの引用状況をまとめておきます。引用元で多いのは、(1)週刊文春(13回)(2)週刊新潮(10回)(3)週刊朝日、サンデー毎日(各9回)(5)週刊現代、女性セブン(各6回)(7)週刊ポスト、クロワッサン、SPA!(各5回)など。引用した筆者は男性61%、女性39%。五木寛之、鴻上尚史、平松洋子の各氏が最多の4回で並んでいます。引き続きご愛読ください。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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