アマゾンで高評価も
一連の「漫画版」の中で動きが早かったのは、あさ出版。7月初めに『マンガ&あらすじでつかむ! 60分でわかる カミュの「ペスト」』を出版している。著者の大竹稽氏は教育者・哲学者。イラストは羽鳥まめ氏。
宝島社も7月に2冊出している。中旬に『マンガで読むアルベール・カミュ「ペスト」』 (TJMOOK)、下旬に『まんがでわかるカミュ「ペスト」』だ。前者はフランス文学者の中条 省平氏の監修、漫画は嘉?もち氏。後者は哲学者の小川仁志氏の監修で、イラストは前山三都里氏。
カミュはフランスの作家として知られるが、実はフランス生まれでもなければフランス育ちでもない。生まれたのは、フランスの植民地だったアルジェリア。父親はフランスからの入植者で、農業労働者。母親はスペイン系だった。『ペスト』の舞台がアルジェリアということには、カミュ自身の人生と、フランスとアルジェリアの関係が投影されている。
また、『ペスト』は、単に感染症を扱ったものではなく、第二次世界大戦で欧州を襲ったナチスの支配を念頭に置いて書かれたものだとも言われている。幻冬舎版では、そのことを踏まえ、「対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み、圧倒的共感を呼んだ長編」ということも強調されている。
アマゾンで見ると、これらは漫画版とはいえ、「星4個」の高評価が少なくない。小説を読むのが億劫な人も、手に取る価値がありそうだ。