差別ではなく共感を
元TBSアナウンサーの小島さんは、いまや複数の連載を抱える人気エッセイストとして、さらにはフェミニズムの論客として知られる。
自身の経験を交えた主張は、たとえば「女子アナ」の呼称根絶のように具体的で鋭く、昭和オヤジ的思考が抜けない諸氏には手ごわく、煙たい存在である。
本作で小島さんが言わんとするのは、「差別ではなく共感の要素として美を扱い、使いこなそうよ」ということだろう。美をよしとする価値観を人間の本性と認めつつ、それを相対化し、一面的な理解や慣習に振り回されることを戒める、そんな視点である。
鼻が高い、目元が涼しい、足が長い、胸が大きい...容姿に一喜一憂する社会を、目が見えない人の例を引いて喝破する。オヤジたちの逃げ道をふさぐ展開はうならせる。
そこから(1)何かを美しいと感じる気持ちは制御できない(2)何を美しいと感じるかは主観的、複雑多様な要素による...という結論を引き出す。
美を頭から否定しないところが、また巧みである。
本誌を含む女性誌は「美」、それも見てくれの美しさに関する情報にあふれている。その中で小島さんの論旨は異彩を放つが、それだけに脇を締め、論理的に書き進めている様子がわかる。たとえば同じ講談社の「VOCE」などで、内面を含む「女性美」を指南する齋藤薫さんの、ある意味の対極として、まだまだ活躍の場はありそうだ。
冨永 格