「美」はエライのか 小島慶子さんは見た目に囚われる社会に「喝」

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差別ではなく共感を

   元TBSアナウンサーの小島さんは、いまや複数の連載を抱える人気エッセイストとして、さらにはフェミニズムの論客として知られる。

   自身の経験を交えた主張は、たとえば「女子アナ」の呼称根絶のように具体的で鋭く、昭和オヤジ的思考が抜けない諸氏には手ごわく、煙たい存在である。

   本作で小島さんが言わんとするのは、「差別ではなく共感の要素として美を扱い、使いこなそうよ」ということだろう。美をよしとする価値観を人間の本性と認めつつ、それを相対化し、一面的な理解や慣習に振り回されることを戒める、そんな視点である。

   鼻が高い、目元が涼しい、足が長い、胸が大きい...容姿に一喜一憂する社会を、目が見えない人の例を引いて喝破する。オヤジたちの逃げ道をふさぐ展開はうならせる。

   そこから(1)何かを美しいと感じる気持ちは制御できない(2)何を美しいと感じるかは主観的、複雑多様な要素による...という結論を引き出す。

   美を頭から否定しないところが、また巧みである。

   本誌を含む女性誌は「美」、それも見てくれの美しさに関する情報にあふれている。その中で小島さんの論旨は異彩を放つが、それだけに脇を締め、論理的に書き進めている様子がわかる。たとえば同じ講談社の「VOCE」などで、内面を含む「女性美」を指南する齋藤薫さんの、ある意味の対極として、まだまだ活躍の場はありそうだ。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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