コロナ追い風、カミュ『ペスト』累計125万部 「Yahoo!検索大賞2020 小説部門賞」に

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三重の意味が込められている

   カミュはフランスの作家として知られるが、実はフランス生まれでもなければフランス育ちでもない。生まれたのは、フランスの植民地だったアルジェリア。父親はフランスからの入植者で、農業労働者。母親はスペイン系だった。カミュが生まれた翌年、父は第一次世界大戦に召集され戦死、4歳上の兄とともに母方の祖母の家に移る。家は貧しく、勉学に励むことができる環境ではなかったが、教師に恵まれ上級学校への進学が実現、アルジェ大学文学部を卒業している。

   アルジェリアは1830年から1962 年までフランスの植民地だった。『ペスト』の舞台がアルジェリアということには、カミュ自身の人生が投影されている。

   つまり、『ペスト』は、単なる疫病小説ではなく、フランスという強大な権力に蹂躙され、屈服を強いられるアルジェリアの姿とも重なる。

   さらに、ナチスの支配をも念頭に置いて書かれたものだといわれている。平和な町にある日、ナチスドイツが現れ、あっという間に町は彼らに占領され精神の自由を奪われる。

   フランスをはじめ欧州の多くの国民が、第二次世界大戦で、そんな「不条理」を経験した。ナチスに迎合した人もおれば、レジスタンスを試みた人も少なくなかった。『ペスト』の刊行は大戦が終わって間もない時期であり、作品に込められた暗喩を、欧州の多くの読者が自分のこととして実感できた。このように『ペスト』には三重の意味が込められているといわれている。

   価格は750円+税。

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