引退から14年、48歳の元プロ野球選手・新庄剛志氏が2020月12月7日の12球団合同トライアウトに参加し、適時打を放った。
「ボールがよく見えた。(ボールが)止まっていたんじゃないかなというくらい」
12月7日付のサンケイスポーツ電子版によると、こうコメントしたという。野球選手は、視力の衰えが選手生命に影響するといわれるが、長く球界から離れていた新庄氏はプロの球を打ち返した。J-CASTトレンドは、その「目」に注目した。
2006年引退の理由は「目」だった
2006年にプロ野球選手を引退した新庄氏。07年1月28日に当時の公式サイト「CLUB SHINJO」(閉鎖)で、「野球をあきらめた原因は実は『目』だったんです。去年、開幕して一週間たった試合で急にボールがかすんで見えだし、特に右ピッチャーのカーブと左サイドスロー投手の時、最悪でした」と告白していた。
19年11月12日にプロ再挑戦をインスタグラムで表明した際には、12年間トレーニングをしていないとユーチューブの動画の中で語り、「目がやっぱり衰えている」とコメント。体作りと共に、速いボールを受けられるバッティングセンターに通うことで目を慣らしていくと語っていた。
そしてトライアウト――。第1打席は二ゴロだったが、143キロの球に反応した。米大リーグ、シカゴ・カブスのダルビッシュ有投手は7日にツイッターで「10年以上野球やってないのに143km/hを芯に当ててるのが凄すぎる」と感心していた。
第4打席で126キロの変化球をレフト前へタイムリーヒットとした。
前述のサンスポ電子版の中で、「ポイントは目(視力)だったんだよね、実は。だけど、見えている。ものすごく見えている」と答えていた。
野球評論家の赤星憲広氏は8日放送の「スッキリ」(日本テレビ系)で、「(新庄氏が球に)目がついていけたっていう話をされていた、というコメントを見たんですけど。プロの球を4打席見ただけで対応できるんだというところが一番驚いたところ」と話した。
専門家が考える新庄氏の目の「秘密」
日本ライフル射撃協会でチーフドクターを務め、様々なプロ野球選手も診察してきた枝川宏医師(えだがわ眼科クリニック・東京都目黒区)に取材した。すると「部分的に目の器官だけを鍛えることは不可能です」と語った。
そもそも医学的には動体視力の定義が存在しない上に、視力をトレーニングで鍛えることもできないという。また、視力が良くても活躍できない選手、逆に少々悪くとも一軍でプレーする選手、それぞれいるとも。
新庄氏についても、「動体視力が上がったから打てたということではないと思うんですよ」と枝川医師。そのうえで、タイムリーを打てたのは、「彼は再び、ボールを見て打つということを繰り返したんだと思います」と推測する。
「目を鍛えるのではなく、目から入った情報を脳にいかに伝えて、運動指令を出し、全身運動をするか。その中で野球に特化したスキルを鍛えたということではないか」
こうした一連のスキルは、トレーニングによって高めることができる。そうすることで「打てなかったことが打てるようになることは可能」なのだという。その後、「全体的な野球のスキルを彼は上げていったんだと思うんです。打てるようなところまでスキルを上げたと。すごいと思います。10年ぐらい(野球を)やめてたわけですから」とコメントした。