インフルエンザ患者が大幅に減少している。厚生労働省によると、2020年8月31日〜11月29日の期間、全国の患者数は263人。前年の同時期は9万8279人で、比較すると99%減だ。
1年前との違いは、新型コロナウイルスの感染予防対策として手洗いやアルコール消毒が、今年は至るところで徹底されている点がある。因果関係は明らかになっていないが、患者数が減少している感染症はインフルエンザだけではない。
3月末から減少した「咽頭結膜熱」「胃腸炎」
国立感染症研究所が公式サイト上で公開している「感染症発生動向調査週報」では、毎週の主要な疾患の感染発生状況が、過去5年間のデータとの比較でわかる。
2020年第47週(11月16日~22日)を見てみよう。過去5年と比較して、ほとんどの感染症が減少傾向にある。とくに減少が顕著なのが、「咽頭結膜熱」だ。発熱、咽頭炎、眼症状を主とする小児の急性ウイルス性感染症で、「アデノウイルス」の感染によって引き起こされる。20年1月から3月までは例年並みの数値だったが、3月末になって発生数が急下降している。その後も例年を上回ることなく、低い数値を保っている。
「感染性胃腸炎」も、同じく今年3月末以降は一度も過去5年の数値を上回っていない。水痘(水ぼうそう)もまた、今年4月頃から減り、その後例年の数値より下だ。
乳幼児を中心に夏季に流行する急性のウイルス性咽頭炎「ヘルパンギーナ」、小児を中心にみられる「伝染性紅斑」(りんご病)、「流行性耳下腺炎」(おたふく風邪)についても、今年は著しく感染の発生数が落ちていることがわかる。
19年に大流行した「手足口病」だが
2019年に大流行した「手足口病」も大幅減だ。手足口病はウイルスの感染によって起こる感染症で、口の中や手足などに水疱性の発疹が出る。主に夏季に流行し、国立感染症研究所のデータによると、昨年7月22日~28日までの1週間での患者数が過去10年で最多となった。11年や15年にも夏に流行し、患者の数が急増していた。
ただ、今年はほとんどゼロに近い状態で、一度もグラフが上向きになることなく横ばい状態だ。
こうしたあらゆる感染症の予防策について、厚労省や同研究所は「手洗い」「うがい」「手指の消毒」「患者との接触を避ける」ことなどを推奨している。20年は新型コロナウイルスの流行により、多くの人が上記を実践するようになった。
直接的な関係は分からないが、もしかしたら新型コロナの影響で他の感染症が抑えられているのかもしれない。