『サピエンス全史』のハラリが語る「コロナ禍」

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■『緊急提言 パンデミック』(著・ユヴァル・ノア・ハラリ、河出書房新社)

   再びコロナが拡大している。欧州では再びロックダウンだ。日本政府も、感染拡大防止と経済再生の両立を目指しているが、このバランスにどの国も苦しんでいるように見える。日本学術会議ではないが、総合的・俯瞰的に、この直面する事態を見たい、と思い、『サピエンス全史』の著者であり、現在の知の巨人の一人と称されるユヴァル・ノア・ハラリの寄稿とインタビューを掲載した本書を選んだ。収載されている発言は3~4月頃の第一波のピーク時ものだが、一旦の収束を見て再び拡大している現時点でも、傾聴に値する。

歴史の行方を決めるのは人間

   まず、歴史学者として指摘しているとおり、感染症は農業革命以来、人間の歴史で中心的な役割を演じてきた。その認識の上に、「ウイルスが歴史の行方を決めることはない、それを決めるのは人間である」と断言している。政府の対応に関するメディアの報道や、給付金をはじめとする経済対策を巡る動きなどを見るだけでも、国民の現状に対する不安感とストレスが政策判断に大きく影響しているように思う。

   本書を見て改めて思うところは、ウイルスの実態と世界的伝播の進捗状況、そして各国の政策対応とその結果がリアルタイムで世界的に共有でき、医学的知見のみならず、IT技術を駆使して対処できるということは、感染症史の中で初めてということだ。かつては病の原因も、国際的な状況も分からず、より大きな不安感の中で人類は感染症と対峙していたのだろう。今回は宗教に依拠する人は少なく、本来疫病退散を目的としてきた宗教的儀式は「3密」の場として回避の対象にすらなっている。

   さらに、本書は、今回の新型コロナウイルス感染症の意味として、(1)国境の恒久的な閉鎖によって自国を守るのは不可能であること、(2)真の安全確保は信頼のおける科学的情報の共有とグローバルな団結によって達成されることを挙げ、我々がこれまでの初動対応の検証と今後の効果的な政策対応の在り方を検討する上で、重要な示唆を提示してくれている。

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