予測に対する感度や評価が大事
予測をどのように受け止めるか。予測を支える理論や技術は(恐らく、急速に、大きく)進歩し続けている。それでも、まだ分からない(理論的に解明されていない)部分はあるし、技術的にできないこともある(コンピュータの処理能力にも限界がある)。自然や社会経済(あるいは人間の考え)はとても複雑なので、観測が難しかったり、数式や計算に乗りにくかったりする部分がかなりあるだろう。そして、将来は不確実だ。手元にあるデータは過去のものということになるが、未来が過去と同じように動くものなのかどうかは分からない。
筆者は、予測は単体ではなく、それに対する感度や評価が併せて用いられることで、初めて力が発揮できるという。大切なことは、予測がどのような考え方や技術で導かれ、それがどのような意味をもっているかを感じ取ることではないかと思われる。確度の高い予測は(それ自体を)施策に活用できるだろうが、現時点では予測が難しいということを認識することも大切で、いつ何が起きるか分からないという前提で起きたときにどうするかなど予測の難しさを踏まえた備えに生かすことができるだろう。
本書の議論からは少し外れるが、予測を幅広くとらえた場合、その性質も色々あるように思う。天気予報(weather forecast)などは「当て」にいっているということだと思うが、最近の動向を将来に投影(projection)したらどのような姿になるかということを(幅を持って)示すことで、課題把握や施策立案の基礎となるものもある。本書でも紹介されている国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」は、"Population Projections for Japan" だ。
本書の「予測」をめぐる話は、数学の予想(まだ証明されていない)や物理学の予測(まだ実験等で観測・確認がされていない)、機械学習、将棋の次の一手、セミの脱皮、感動や知性など、分かっていること、分からないことも含めて、様々に広がっていく。世の中が予測で成り立っている(予測がなくなると世の中は大混乱に陥る)といってもいいくらい、身の回りに予測に関係するものがあることにも気づく。こうしたところも本書の面白さになっているといえるだろう。
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