プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスで、1年での監督交代劇となった。2019年シーズンに指揮をとった平石洋介氏、今季監督だった三木肇氏と2年連続だ。
2人の他にも2005年の田尾安志氏、10年のマーティン・ブラウン氏、15年の大久保博元氏と、合計すると1年で退任した監督が5人もいる。プロ野球では、1年で一軍監督が退任することは珍しいだけに、気になる。
オーナーの発言力が強いと言われているが...
2000年以降、楽天以外で監督が1年で退いたのは、14年の埼玉西武ライオンズ・伊原春樹氏、またオリックス・バファローズで03年(当時の球団名はオリックス・ブルーウェーブ)途中に就任したレオン・リー氏から06年の中村勝広氏にかけて退任が連続したケースがあるぐらいだ。
一方で楽天の歴代監督を並べると、複数年務めた監督は野村克也氏(06〜09年)、星野仙一氏(11〜14年)、梨田昌孝氏(16〜18年途中)の3人しかいない。野球ライターの西尾典文氏は20年11月11日付の「デイリー新潮」で、「この3人はいずれも他球団で優勝経験があり、簡単に解任できないので複数年任せたが、そうでない監督については『使い捨て』という見え方すらしてくる」と評している。
また、名球会会員で評論家の山崎裕之氏は「親会社は球団を他のグループ企業と同様、一つの営利会社としてしか見ていないのではないか。オーナー(編注:三木谷浩史氏)が首脳陣に対して打順を指示するなど、現場介入の話も取りざたされる。監督の存在を軽く扱い、敬意がないと思われても仕方がない」(11月6日・日刊ゲンダイデジタル)と分析している。
楽天の監督に1年交代が多いのは、オーナーやフロント(運営会社)の影響があるのか。元スポーツ紙記者に聞くと、
「それが一番だと思いますよ。できたばかりの球団ですし、オーナーの発言力が強いとよく言われている。実際どうなのかは分かりませんが」
とみる。
「楽天はオーナーを含めたフロントと現場が一体となって活動しているとされていますが、オーナーやフロントの方から『結果が出なかったが、どうするんだ』という話が出ているのではないか」
と推測した。楽天は2004年の球団設立以来、Aクラス(リーグで3位以上)でシーズンを終えたことは4回しかない。
「最後は自分で責任を取るという覚悟」か
来季の指揮官は、石井一久氏。今季までGM(ゼネラルマネジャー)を務めていた。監督兼任となり、これも異例だ。前出の記者は、「最後は自分で責任を取るという覚悟なんじゃないか」と話す。
「基本的に日本のGMと、米大リーグ(MLB)のGMの考え方は違います。GMが全ての人事権を握るのが米国式。石井さんもMLBに行っていたから、そうした認識でチームの人事を全て決めていたのですが、それで結果が出なかったから『最後は自分でやるしかない』と」
平石氏は、前年に6位だった楽天を19年に3位まで押し上げたものの解任。後任の三木氏は4位に終わり、石井GMがその責任を取る覚悟なのではないかとした。
今季パ・リーグを制し日本シリーズに臨む福岡ソフトバンクホークスは、前身の福岡ダイエーホークスを継承した2005年以降、王貞治氏、秋山幸二氏、工藤公康・現監督と、監督の交代は2回しかなく、いずれも長期政権が続いている。楽天とはあまりにも対照的だ。
なぜ、こうも違うのか。「もちろん成績が伴っているのもあるし、恐らく(オーナーの)孫正義氏による長期的な経営方針の意向が強いのだと思います」(前出の記者)。