掃除の快感と効用 星覚さんがプロとして勧める時間帯は「朝食後」

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大きい「やりとげ感」

   禅語を交えての文章は少しとっつきにくいが、言わんとすることはわかる。身の回りを整えて暮らせば呼吸や心までが安定し、「初々しい気持ちで日々を生きる」ことができる、というわけだ。掃除は自他を幸せにする行いだと。

   そこまで深く考えてのことではないが、デスク周りを片づけるだけでスカッとして執筆がはかどった、という経験はある。仕事場は雑然としているほどいいという人も、とりわけ物書き諸氏には多そうだが、ここでは無視させてもらう。

   様々ある家事のうち、私が料理の次に好きなのが掃除だ。やはり結果が目に見えるのが大きい。ゴミ拾いもガラス拭きも、「事前」が汚いほど「事後」は美しく、嬉しい。やりとげ感が高いのである。

   掃除は本来、衛生上の理由から定着した習慣と思われるが、コロナ禍で心のリフレッシュという意味が加わる。生存のための栄養補給、すなわち食がいまや文化に昇格しているのだから、掃除や洗濯が精神性を帯びたところで何の不思議もない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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