ツイッター「中の人」炎上防ぐ妙案あるか 万人への配慮もはや不可能な時代

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■短期集中連載(第2回)

   タカラトミーとタイツメーカー・アツギの企業公式アカウントが起こした炎上騒動。前回の記事でガイアックス(東京都千代田区)ソーシャルメディアマーケティング事業部の重枝義樹部長は、ツイッターユーザーが「より怒りを共有して繋がりやすくなっている」と指摘した。そのため、以前であれば見過ごされていた企業公式アカウントによる失言や、ジェンダーに無神経な企画が批判され、炎上に発展するという。

   2回目は、炎上を避けるためにSNS担当者が心掛けるべきこと、万が一炎上してしまった場合の対応方法だ。

  • ツイッター「中の人」炎上防ぐ妙案あるか
    ツイッター「中の人」炎上防ぐ妙案あるか
  • ガイアックス・ソーシャルメディアマーケティング事業部の重枝義樹部長
    ガイアックス・ソーシャルメディアマーケティング事業部の重枝義樹部長
  • ツイッター「中の人」炎上防ぐ妙案あるか
  • ガイアックス・ソーシャルメディアマーケティング事業部の重枝義樹部長

「ダブルチェック」でも無意味なケース

   企業の中には、ツイート前に担当者以外が確認する「ダブルチェック体制」のところがある。重枝氏は、炎上防止に「意味がある」としつつ、以下に挙げるAとB二つの条件が揃っていないと「意味が半減、もしくはゼロになる」と話す。

A) 担当者やチェック者が、もともとフェミニズム、領土問題、人種問題、LGBTQ、格差、宗教、動物愛護などの議論に敏感であり、かつ「肯定」と「反対」、両方の立場で見ることができる
B) 企業としてのポジションが明確である。誰が顧客か、その顧客にどのような価値を提供しているかを考える

   重枝氏によれば「タイツの日」を記念した企画「#ラブタイツ」で炎上したアツギはBが焦点。一般的に男性を対象として描かれる美少女キャラクターの「萌え絵」を、企業公式アカウントで扱ったことに問題があるという。後述するが、同社の顧客は女性がメインだ。

「この騒動は、いくつか文脈が入り組んでいますが、萌え絵を『ポルノ』とみなす感覚の広がりも水面下では影響していると思います。何をポルノとみなすかは、非常に恣意的であり、正直人それぞれですが、私たちは『顧客が誰か』で判断すべきだと考えています」

   そのうえで重枝氏は、アツギは「萌え絵」に慣れていない女性が顧客のため、今回のようなコミュニケーションは「そもそも許されない」とした。ただ、実際にはアニメやゲームといったポップカルチャーに関心を寄せる層もアツギのタイツを買っており、事実上のターゲットに含まれる。その難しさの中で起きてしまったのが、「#ラブタイツ」炎上だという。

自己矛盾のない「自分たちらしい発信を」

   重枝氏は炎上を避けるうえで、「様々な意見があることには敏感でありつつ、しかし『万人に配慮することはもはや不可能な時代になってしまった』ということは受け入れて自らのポジションを明確化し、自分たちらしい発信を行うことが重要」と説明している。

「毛皮製品がメインのアパレルブランドが、動物愛護主義者の批判を受けて謝るなら、自らの顧客を裏切ることになる」(重枝氏)

   自社が誰に向けて商品やサービスを提供しているかを踏まえた対応が求められるということだろう。一方で、「自然環境の保護を訴えるアウトドアブランドが『キャンプで暖かいから』と言って、希少動物の毛皮をツイートするなら自己矛盾になる」。顧客と価値観が相違しない投稿を心がける必要がある。

もし炎上したらまず「中止」すべきこと

   ただ、どれほど対策を重ねてもリスクをゼロにはできない。問題が起きた場合はまず、いかなる業種・業界の場合でも「予約していた投稿など、平時を想定して行っているコミュニケーションを中止」する。そのうえで、広報や経営層など、会社としての公式見解を決める立場の人が「謝罪するにせよ、自らの正しさの主張を展開するにせよ、社として一貫した方針を出すこと」が求められるという。

   ガイアックスでは、企業が社員に向けて作成するソーシャルメディアの利用に関する指針とルール「ソーシャルメディアガイドライン」の制定を推奨している。重枝氏は「判断の難しい炎上のタネは、ガイドラインよりも勉強会やワークショップで学ばないと、なかなか気づけるようにはならない」とことわりつつ、炎上が起こった際に慌てず対処するうえで大きな役割を果たすとしている。

   次回は「ツイッター担当者」にするのが望ましい人物像、ツイッター運用における「個性」の出し方について見ていく。

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