男の子の育て方 林信朗さんは父親に「自分の姿を息子に見せろ」と

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   オーシャンズ12月号の「僕のメモランダム」で、服飾評論家の林信朗(はやし・しんろう)さんが男の子の育て方について持論を展開している。

「去年のことだが、小さい男の子のお母さんから男の子の育て方について立て続けに相談を受けた。赤ちゃん時代はともかく、女の自分には男の子をどう育てたらいいか、確たるものが何もない。どうしたら素敵な紳士に育てられるのか...」

   林さんの答えはこうだ。

「男の子はお父さんを見て育ち、長ずれば長ずるほどお父さんに似てくる。お父さんが紳士なら、その息子もかなりの確率で紳士に育っていくよ...例外はあるだろうが、大半の家庭では男の子にとっていちばん身近なロールモデルは父親だから」

   では、質問者のダンナたちは子育てにどう参加しているのか。ママたちによると、週末に一緒に遊ぶ、風呂に入れる、着替えの世話をする、などだった。それもよし。林さんは「お父さんに心がけてほしいのは、自分の姿を息子に見せるということだ」と説く。

   林さんによると、父親が息子に見せるべき姿は三つある。

   まずは服や靴を選び、身につけ、手入れする一連のフロー(流れ)だという。これが筆頭にくるあたり、いかにも服飾評論家、そして男性ファッション誌の連載らしい。

「簡単なことではあるが、同性の先輩かつ当事者であるお父さんが毎日自らの姿で見せるのと、異性のお母さんが口で説明するのとでは説得力がガ然違う。実地に見れば、呼吸するように男の子の身体に入っていくのである」
  • 男の子はお父さんを見て育つ
    男の子はお父さんを見て育つ
  • 男の子はお父さんを見て育つ

父子でアイロン、靴磨き

   では、どんな場面を「見せる」べきなのか。

   例えば帰宅後、スーツやジャケットはすぐにしまわず、軽くブラシをかけてひと晩陰干しにする。理由がわからなくても、それを見ていれば父親が服を大切に扱っていることはわかる。シャツやハンカチに自らアイロンをかけるのもいい、という。

「慣れた手つきで小さなシワも見逃さず、プレスしていく姿を見せる...お父さんの仕事ぶりは丁寧で流れるようだなと目に焼き付くだろう」

   休日の靴磨きを親子でやるのもオススメだ。「レザーのシューズがピカピカに輝くまで磨き上げるのは小さなカタルシスである」

「たかが服、されど服。父親がそれを大切に、丁寧に扱い、いつもキチンとした身なりでいれば、それが息子の『原風景』になり、知らず知らずのうちに自分もそうするようになっていくのである」

   「息子育てに言葉はいらない」というわけだ。服や靴へのこだわりと愛着。それをわが子に見せることが何よりの「紳士教育」になると。見せるべき姿の「その1」である。

   そして「残りのふたつは次号で明かしましょうか」という末尾に至る。

粋で優しい馬鹿でいろ

   オーシャンズ(版元はライトハウスメディア)の読者層は30代後半から40代、まさに「小さな息子がいるお父さん」の世代である。彼らに読ませる上記連載には〈林信朗がオトコたちへ綴る言葉〉の副題がつく。「MEN'S CLUB」などの編集長を歴任した筆者の助言である。ファッションにこだわる読者たちは居住まいを正して読むだろう。

   男の子の育て方と、女の子の育て方。少子化が進み、どちらにしても経験するのは1回きりという親が増えている。そのせいか指南本の類も多いようだ。

   ファッションへのこだわりが薄くて浅い冨永も、かつては小さな男の子、それも兄弟の父親だった。私の場合、アイロンや靴磨きには縁がなく、背中で教えるなんて格好いいこともできず、必要と思えば言葉で説教した。

   2人とも「オーシャンズ世代」に入り、ひいき目に見ても紳士には遠いものの、それぞれ育児に参加するタイプの父親になっている。子育てにしっかり関わらなかった父親の姿を、反面教師として観察していたのかもしれない。

   わが子だけでなく、男子全般の理想として私がいつも思うのは、桑田佳祐さんの「祭りのあと」にある〈悪さしながら男なら 粋で優しい馬鹿でいろ〉という歌詞である。

   むろん「悪さ」「粋」「優しさ」「馬鹿」のバランスが難しいのだが。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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