メロディーと歌がリズムを連れてくる
矢沢永吉の「バラード」は、一般的なイメージとは相当に違う、と書いた。
何よりも違うのは「歌の情感」だろう。
身体が自然に踊りだしそうな激しいアップテンポこそないもののリズムがある。メロディーと歌がリズムを連れてくる。バラードだから静かにという「決まり事」で歌っているわけではない。感情が自分で書いたメロディーに乗り移り、それが歌になる。
「会いたい」「好きだ」「悔しい」「哀しい」「切ない」などの感情の狂おしいばかりの張り裂けそうな切迫感。年齢を重ねたからこそわかってくる「虚しさ」や「やるせなさ」。言葉にならない複雑な感情が声になり歌になる。
こんなに「ロック」を感じさせる「バラード」を歌える人は他にいないだろう。
去年のアルバム「いつか、その日が来る日まで」の「その日」は、その人によって思い描くことは違うのかもしれない。
でも、誰にでも「その日」はやってくる。
そのことを知ったから歌える歌がある。
STANDARD~ザ・バラードベスト」は、そういうアルバムだと思う。
(タケ)