石川県小松市の農産物を使った料理と、酒蔵・農口尚彦研究所の日本酒をペアリングさせた「食」を振る舞う「小松Saketronomy(サケトロノミー)」が2020年11月1~2日、農口尚彦研究所内のテイスティングルーム「杜庵(とうあん)」で開催された。同イベントは19年3月に始まり、4度目となる。
東京・乃木坂の懐石料理店「山崎」の山崎志朗シェフが、醸造家・農口尚彦氏の技術や精神を継承する農口尚彦研究所の酒や米麹、酒粕を使い、「酒まん」や「甘鯛酒蒸し」などの「限定ペアリングコース」を参加者に振る舞った。
1度単位で温度設計し、日本酒を提供
ソムリエ資格も持つ山崎シェフは、事前に酒蔵の全商品を入念に分析し、コース料理をつくり上げた。ヴィンテージ違いを含む「9種類の日本酒」に合う10種類の料理を用意し、日本酒の温度を1度単位で緻密に設計して提供。料理に合わせたワインや酒を提案するのとは逆のアプローチだ。一つの酒蔵の酒を使ってコースを組み立てたことについて、山崎シェフはこのようにコメントしている。
「味はそれぞれ違えど、一つの酒蔵のお酒。一貫性のある9品目のお酒に、どうやって地元食材を使ったお料理を合わせるか、試行錯誤を重ねて創り上げる新たな経験が学びにつながった」
また、農口尚彦研究所の酒に関して山崎シェフは「味の骨格がはっきりしていて、お米の旨味が口の中で爆発するような力強いお酒。なのに味わいは洗練されていてキレもいい」と評価。自らの店舗でも扱っており、「普段東京で提供する場合も、メインに近い終盤で料理に寄り添ってくれる信頼のお酒というイメージ」と語った。
生産者の一人として、「限定ペアリングコース」を味わった農口氏は、「今年で88歳なのですが、お客様に喜ばれる食中酒をつくろうと一生懸命です。山崎シェフのお料理はどれも素晴らしく美味しいペアリング。これからももっと良いお酒を造り続けます」と意気込んだ。