寒い冬に鍋などで食べる機会も増える高級魚「フグ」。非常に美味だが猛毒があり、素人が調理すると食中毒の恐れがある。
徳島県は2020年11月2日、自ら調理したフグを食べた80代男性が死亡したと発表した。「河豚(フグ)は食いたし命は惜しし」ということわざがあるように、その毒の恐ろしさは広く知られているはず。それでもなぜ、こうした事故が今も起きてしまうのか。
特効薬なし、呼吸困難も意識は死の直前まで「明瞭」
フグによる食中毒の主な原因は、フグ体内に含まれる毒「テトロドトキシン」だ。東京都福祉保健局の公式サイトによると、麻痺による呼吸困難を引き起こす。特効薬はなく、致死率のきわめて高いことが特徴で、食べてから4~6時間ほどで死に至る。
まず、食後20分~3時間で唇や舌、指先のしびれが始まり、千鳥足に。そのあとすぐに知覚マヒ、言語障害、呼吸困難が生じ、血圧が下降する。意識は死の直前まで明瞭で、意識消失後まもなく呼吸・心臓が停止し、死亡するとのこと。
厚生労働省によると、フグによる食中毒は国内で毎年発生している。2019年には15件の食中毒が起き、1人が死亡した。20年では前述の徳島県の男性のほかにも複数の食中毒が発生している。9月に岡山県の80代男性が自宅で調理したフグを食べ、食中毒を起こして一時意識が混濁した。