建前への反発 梅沢富美男さんが「怒りっぽいおやじ」を続ける理由

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

俺は舞台の人間

   昨今のテレビでは「本音トーク」がもてはやされる。「キレ芸」を売り物にするタレントもいる。SNSでの好き放題、何でもアリの言説が少なからず影響しているようだ。昔ながらの予定調和では緊張感もハプニングも生じず、視聴者が離れてしまうのだろう。

   ただ梅沢さんの場合、計算づくで、あるいは逆に見境もなく怒っているのではなく、彼なりに「怒るべき理由」があるようだ。だからこそ、カメラのない所でも怒る。

   梅沢さんは、舞台と客席の緊張関係の中で芸を磨いてきた。アドリブ自在、臨機応変の客あしらいは大衆演劇の魅力だ。融通の利かないマニュアル人間や、四角四面のルールには我慢ならないものを感じているに違いない。そして「俺は舞台の人間。いやなら使わなくて結構」という気概が、思い切った発言につながっていると見た。

   連載タイトル「人生70点主義」は、「好不調があるからいつも満点はとれない。でもプロとして、いつでも70点以上のものはお見せしたい」といった意味。このサービス精神があるから、バラエティーや情報番組での毒舌、直言もそれほど陰湿にならない。

   間もなく70歳を迎える梅沢さん。いまさら妙に丸くなるより、これまで通りのキャラを通してほしい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

姉妹サイト