建前への反発 梅沢富美男さんが「怒りっぽいおやじ」を続ける理由

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   週刊現代(10月24日号)の「人生70点主義」で、梅沢富美男さんがマニュアルや建前に支配されたやりとりを批判している。テレビでは「キレやすいおやじ」として世相に毒づいている梅沢さん。あれは半分以上「演技」だと思っていたのだが、どうも本気で怒っているらしいのだ。

   「最近つくづく考えるんですが、『大人』って、なんでしょうね。『あのくらいで怒るなんて、大人げない』...ツイッターをはじめとしたSNSで、私はよくそういうふうに言われます」...本作はこう書き起こされる。

   コンビニで酒やタバコを買うたび「年齢確認」を求められる筆者は、内心「このジジイのどこが未成年に見えるんだ」と苦々しく思っていた。変なことを聞くんじゃないよと。ところが、テレビでそんな主張をしたら、たちまちSNSが炎上した。

   ハンバーガー屋事件というのもあった。稽古に励む若い役者に差し入れようと、梅沢さんはバーガー40個とコーラ40杯を注文した。すると「店内でお召し上がりでしょうか」。この時はつい「俺がそんなに食うように見える?」と声に出てしまったそうだ。

「どちらの店員さんもマニュアル通りに接客しているだけで、別に他意はない。私も、それはよくわかっています。でも、客商売なんだから、ほんの少し血の通った機転を利かせたって罰は当たらないじゃないですか」
  • コンビニで酒やタバコを買うたび「年齢確認」を求められ
    コンビニで酒やタバコを買うたび「年齢確認」を求められ
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テレビの事なかれ主義

   梅沢さんは、年長者が上下関係をテコにワガママを通すような振る舞いを、きっぱり否定する。その上で、おかしいと思ったら言葉で伝えるのが「本当の大人」だと説く。大人の態度という響きのいい「事なかれ主義」が蔓延しているのではないかと。

「それ(大人の意思表示)をしないから、マニュアルばかりがどんどん幅を利かせる世の中になってしまった。私はそう思うのです」

   筆者によると、「事なかれ」が最もまかり通っているのがテレビの世界らしい。

「最近はSNSで叩かれたらすぐ、企画を変更したり、場合によっては番組ごと打ち切りになってしまったりする。テレビの現場はいま、出演しているこっちが呆れてしまうほど過敏になっています」

   2年ほど前の昼のワイドショー。地方の健康センターなどで歌を磨き、紅白出場を決めた男性グループ「純烈」を、梅沢さんはしみじみと、こんなふうに称えた。

〈良かったなあ、きっと『温泉で歌っている』なんて、笑われたこともあったろう。俺も昔は『乞食役者』『三文役者』なんてバカにされてさぁ...〉

   すると、司会の局アナが「ただいま不適切な発言がありました」と謝罪した。「乞食」は放送禁止用語だった。

「私は我が身を振り返り、こういう商売の人間じゃなければわからない辛さ、悔しさを伝えたかっただけ。他人様を指して、乞食と嗤ったわけではありません。いったいどこの誰が傷ついたというのか」

   この一件で、梅沢さんはその番組と縁を切った。「だから私は、この連載でも言いたいことを言い続けます。打ち切り上等だ、コノヤロー!」

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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