アニメーションのように「動く漫画」がある。映像チーム「最後の手段」が、2018年度のメディア芸術クリエイター育成支援プログラムで制作したウェブ漫画「えんちゃんち」だ。人や物がコマごとに不思議な動きを見せる様子を、縦にスクロールして読み進める。
コンビニで天災に巻き込まれて1歳児の自分にタイムシフトした「えんちゃん」が、納豆の妖精や竜宮城の乙姫に出会いながら「強大な生命力と想像力で地球を破滅へと導きつつ、新たな世界を開いていく」――。漫画とアニメーションが融合した「モーションコミック」は、どのように生み出されるのか。「最後の手段」メンバーの一人、有坂亜由夢さんに制作過程を取材した。
アニメーション完成までに1年の「大作」
有坂さんは、「イラストを『パラパラ漫画』のようなイメージで、紙にペンで一枚ずつ描くこと」から作画が始まると説明した。現在9話まで公開しており、イラスト制作にかかる時間は話数によって差があるが、大体1か月に1本のペースで仕上がる。「地味で大変な工程」と語る。
「イラストが出来上がると、次はそれをアニメーションにする作業になります。私には『常に絵を動かしていたい』衝動があり、具体的にどう動かすか、どう見せるかにこだわった結果、第一話はアニメーション完成までに1年かかりました。ウェブ漫画だとページ制限がなく『ここのコマをもっと広げたい』と思ったとき、いくらでも広げられるので、延々と考え続けてしまったんです」
緻密に作られた作品だが、読み手には「感覚的に楽しんでほしい」。同作は言葉(台詞)が非常に少なく、ほぼ絵で構成されているのが大きな特徴だ。有坂さんは「あえて言葉を減らし、絵の情報量を増やしています。難しく考えるよりは感じてもらいたい」と話した。