楽譜と校訂者と国境閉鎖と(前編)

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クロード・ドビュッシーが校訂者に

   私も様々な版を所有して参照することが多いのですが、ここで面白いのは、フランスのデュラン社から出ているショパンの楽譜です。

   ショパンは、生涯に残した曲がほとんどピアノ曲という特殊な作曲家なので、校訂者は、ほぼみんなピアニストです。オリジナル譜の研究をして校訂するわけですから、音楽学者的側面も必要ではありますが、やはり、「そのショパン作品をちゃんと演奏できる」という素質は、何より必要なのです。ショパン自身が自作を自演していましたし、作曲の時に「自分で弾いて」作曲していたのが明らかなので、ピアノの演奏のある程度の腕がないと、なかなか細かい演奏の指示まで書き込む校訂者として信用が得られないからだと思われます。私はメインでパデレフスキ版を使うことが多いのですが、彼がピアニストとして弾いていたからこその指使いなど、納得できる指示が多いので、信頼できるからなのです。

   デュラン社はフランスを代表する楽譜出版社で、1869年にオルガニストのオーギュスト・デュランとその友人、後にその息子たちによって創業した老舗中の老舗で、現在は他のフランスの出版社と合併してユニバーサルグループ傘下にありますが、フランス近代音楽史を支えたフォーレ、ドビュッシー、ラヴェル、プーランク 、メシアンといった輝かしい作曲家の作品を出版し、支えた会社です。

   そのデュラン社も、ショパンの楽譜を出版しています。あまりメジャーな楽譜ではなく、「ショパンの楽譜」の中でも珍しい部類に入りますが、めずらしいのは校訂者で、なんとフランスを代表する作曲家のクロード・ドビュッシーなのです。(後編に続く)

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミエ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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