カス丸 はーい、ぼくカス丸きゃすう。今週と来週は、競馬界の超ビッグイベントが続けてあるじぇい。無敗3冠馬が牡(ぼ)馬(オス馬)と牝馬両方で誕生するかもしれないという歴史的レースが相次いであるきゃすう。今週はまず牝馬3冠目の秋華賞(2020年10月18日、京都競馬場、芝2000メートル)。無敗の3冠馬といえば、牡馬ではシンボリルドルフとディープインパクトが達成しているけど、牝馬は史上初だじぇい。あのアーモンドアイでさえできなかった偉業だじぇい。桜花賞、オークスと無敗で連勝してきたデアリングタクトは勝てるきゃすう? デアリングタクトを本命◎にしてるガジュマル爺に聞くじぇい。
デアリングタクトの不安点
ガジュマル爺 カス丸、お前もいい時に生まれたもんじゃ。わしも長生きしてきたが、こんな歴史的レースはめったに見られるもんじゃない。先週からJRA(日本中央競馬会)も観客を入れ始めたから、今週はおおいに盛り上がるじゃろ。シンボリルドルフもディープインパクトの3冠も見てきたが、こんどは牝馬で初めてじゃからなあ。世の中も大きく変わったもんじゃ。こんな強い牝馬が出てくるとは夢にも思わなんだ。ともかく、デアリングタクトはとてつもなく強い馬なんじゃ。1冠目の桜花賞(GI、4月12日、阪神、1600メートル)では雨の中、ぬかるみの重馬場を1頭だけ別次元のスピードで駆け抜けたんじゃ。最終コーナーで前にいた11頭をごぼう抜きにした脚には、誰もが度肝を抜かれたもんじゃ。2冠目のオークス(GI、5月24日、東京、2400メートル)では、最後の直線で前の12頭をこれもごぼう抜きときた。このとてつもない強さは、歴代の牝馬3冠馬に比べても最高レベルと言っておかしくないわい。他のどんな馬よりも、3枚も4枚も上を行っておるんじゃ。負ける理由がないんじゃ。3冠達成に向けて何も不安なしじゃ。レース当日、走ることさえできれば、優勝100%間違いなしじゃ。
カス丸 ふーん、すごい自信と興奮だじぇい。デアリングタクトを本命からはずしたカスヨ姉さんはどうきゃすう?
カスヨ わたしは単穴▲にしたわ。たしかに、デアリングタクトは無敗の2冠馬よ。でもね、過去に2冠まできて最後の1冠に泣いた馬もそれなりにいるのよ。なかでも代表的なのがブエナビスタだわね。あの馬も強かったんだけど、2着(入線)だったわ。でもそれは理由があったのよ。京都競馬場の2000mというコースが問題なのよね。このコースは正面スタンド前からスタートして、右回りに進むんだけど、向こう正面から坂を上るのよ。第3コーナー辺りまで1ハロン(200メートル)かけて3メートル上るわけ。そして上ったと思ったら、今度はコーナーの曲がり角から下りになっていて、その3メートルを1ハロンかけて下るわけ。その後は平らなんだけど、下り始めてからゴールまでが4ハロン(800メートル)あるから、いきなり下りに任せてスピードアップすると、最後まで持たないわ。でも、スピードは出さないといけないという加減が難しいコースなのよね。馬にとっては上って下って、スピードも必要だからスタミナとスピードと両方持ってないと勝てないわね。さらに最後の直線が328メートルしかないから、直線で一気に追い抜くというのも至難の業なのね。 というところで、いまから11年前のブエナビスタのときなんだけど、最終コーナーを回ったときに前に馬が9頭いたのね。しかも内ラチ(柵)沿いに走っていたので、外に出そうと手間取ったわけ。その間にレッドデザイアという馬が先頭に躍り出て、ブエナビスタも追撃したんだけど、ハナ差届かず2着入線、しかも外に追い出す時に他の馬の進路を妨害したとして3着降着になってしまったわ。さっき爺が言ってたように、デアリングタクトは桜花賞でもオークスでも、最終コーナーを回る時に前に10頭くらい他の馬がいたのよね。ブエナビスタの時と似ているわね。京都の内回りコースは直線が短いからブエナビスタのように届かない可能性があるのよ。ブエナビスタといえば、ジャパンカップや秋の天皇賞も制した「女傑」よ。デアリングタクトは13番という外枠に入ったから、ブエナビスタのように内に入れず、ずっと外を回していればいいわけだけど、となると今度はスタミナが必要だわね。いずれにしろ、春のレースと違って直線に入る段階でもう少し前に行ってないと届かない、という危険があるわ。去年勝ったクロノジェネシスは最終コーナー5番手よ。その前のアーモンドアイ14番手、ディアドラ9番手、ヴィブロス9番手、ミッキークイーン7番手、ショウナンパンドラ5番手。2ケタはアーモンドアイだけなのよ。春の2冠で12、3番手だったからもう少し前で競馬をしないと危ないわね。まあ、だから、そうしたリスクのある馬は本命にはできないわけ。わかった?