問われているのは、これまでの男性の働き方
本書では、男性の育休は企業にも様々なメリットをもたらすことが示される。ある育休を取得した男性は、育休をきっかけに家庭のことを考えるようになり、仕事に復帰してからも家族と過ごす時間のために、いかに仕事を効率化するか、同僚と円滑に情報共有するかを意識して働くようになったという。
職場には、今週は子どものために早く帰りたい、多少残業してでも今の仕事を仕上げたいなど様々な人がいる。こうした人々をどのようにつなげてチームとして成果を出していくか。部下の育休で上司のマネジメント力が向上したり、上司の育休が周囲の社員や部下の成長の機会になったりした例も紹介されている。
企業の直面するリスクや企業価値についての考え方が大きく変わってきたことも指摘されている。企業のSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが重視されるようになり、SNSが発達し、ハラスメントに対する世の中の目が厳しくなっているいま、人を大事にしない企業は企業価値低下のリスクを抱えていることになる。
こうしてみると、問われているのは、これまでの男性の働き方なのかも知れない。男性の育休(起点)→男性の家庭進出→職場と家庭の大きな変化→社会経済上の課題(少子化・人口減少、企業の生産性・競争力の向上など)の克服→多様なバックグラウンドをもつ人々がお互いに尊重しあい暮らしやすい社会の実現(もちろん夫婦で協力して子育てもしやすい)・・・というこれからの展望を期待したいわけだが、職場と家庭は飛躍的に大きく変わることができるだろうか。全国のたくさんの「上司」に、本書で示されたようなデータ・分析・具体的事例がいきわたり浸透してほしいと思う。
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