子どもが苦しんでいるとき 心を通わせる対話ができれば、それでよい

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大人になっているといっていい人とは

   ここで引用された河合隼雄氏の著作に、「大人になることのむずかしさ」(岩波現代文庫 2014年)がある。評者の手元には1983年に刊行された本がある。おりにふれて、その内容をふりかえる1冊だ。

   河合氏が冒頭にことわりをいれている。「本書は親・教師、などの大人を対象としているものである。したがって、問題をかかえたり、つまずいたりしている青年に、大人がどのようにかかわっていくか、ということが課題になっている。しかし、本書では、大人がどうすればよいか、という視点よりは、青年たちがいかに苦悩しているか、という視点に立って書きすすんでゆきたいと思っている」という。

   第一章「青年期のつまずき」で、このつまずきは、何らかの問題提起を持っているという。そして、これは何を意味しているのかと考える方が、はるかに建設的なのである、との慧眼には脱帽する。また、第4章「人とのつながり」で、「大人であるということは、孤独に耐えられることだ、ともいえるし、いろいろな人と共に連帯してゆけることだ、ということもできる」との考察にもはっとさせられる。

   河合氏は、本書の最後で、「人生のなかに存在する多くの対極に対して、安易に善悪の判断を下すことなく、その中に敢えて身を置き、その結果に責任を負うと決意するとき、その人は大人になっているといっていいだろう。それらの対極はハンマーと鉱床のようにわれわれを鍛え、その苦しみのなかから個性というものをたたき出してくれるのである」という。この言葉の重みを理解し、引き受けていくことが、いまの日本の「大人」に強く求められているとあらためて考えた。「おやときどきこども」とともに、ぜひ一度手にとってもらいたいと思う。

経済官庁 AK

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