カス丸 はーい、ぼくカス丸きゃすう。今年の夏は暑かったじぇい。人間様は相変わらず、夏もコロナにおびえてバカンスどころじゃなかったきゃすう。けど、ぼくらイヌ族は平気だったじぇい。さあ、待ちに待った秋の競馬GIが始まるきゃすう。手始めはいつものとおり、スプリンターズステークス(2020年10月4日、中山競馬場、芝1200メートル)だよ。今年は有力馬が勢ぞろいだじぇい。何が勝つきゃすう、夏競馬に苦しんだカスヨ姉さん?
カスヨ あいかわらずひと言余計だわね、カス丸。でも、夏競馬は昨年と違って、今年は圧勝よ。たんまり儲かっちゃったわね。この調子で秋も突っ走るわよ。まずはスプリンターズSね。短距離の日本一決定戦。今年はメンバーがそろったわね。ここに昨年優勝したタワーオブロンドンがいたら、本当に日本を代表するスプリンターが100%揃ったのにね、蹄の調子がおかしいと言うんだから仕方ないわね。
グランアレグリアの心配な点
カス丸 カスヨさんの本命◎は昨年2着のモズスーパーフレアだじぇい。春の短距離チャンピオンを決めるGI・高松宮記念(3月29日、中京、1200メートル)では勝利し、今回は春秋連覇がかかっているきゃすう。
カスヨ まず、このレースはね、騎手の乗り替わりのある馬は過去10年で0勝なのよ。連帯率もわずか1.5%よ。爺が本命にしているグランアレグリア、ダノンスマッシュ、ミスターメロディーなどの人気馬は、どれも乗り替わりのため軽視するわ。それと、モズはね、中山と相性がいいのよ。1着3回、2着2回、3着以下なしなんだから魅力的でしょ。前走の北九州記念(GIII、小倉、1200メートル)では余裕残しのプラス14キロで出走して2着だったわ。鞍上も引き続き松若風馬騎手が手綱を取るから万全の態勢で臨めるということよ。
カス丸 その乗り替わりがダメというグランアレグリアを本命◎にしたガジュマル爺は、なにか反論あるきゃすう?
ガジュマル爺 わしが本命にする理由は昔からひとつだけじゃ。一番強い馬かどうか、ということじゃ。グランアレグリアは桜花賞(阪神、1600メートル)、安田記念(東京、1600メートル)とマイルGIが2勝、1200メートルは高松宮記念が2着じゃったから、実績はこの馬が1番なんじゃ。あのアーモンドアイに圧勝した安田記念から約4か月ぶりのローテーションなんじゃが、休み明けは4戦して3勝2着1回とまったく問題なしじゃ。カスヨは「短距離の差し馬」という格言を知っておるかのう? つまり、上がり3ハロン(最後の600メートル)の脚(タイム)は常にトップクラスを記録してきておるし、安定感は抜群なんじゃ。不安材料があるとすれば、騎手の乗り替わりではなく、トリッキーな中山コースが初めてということぐらいなんじゃが、最後に急坂があるということでコース形態が似ておる阪神で勝っておるから大丈夫じゃろ。
カスヨ グランアレグリアはね、安田記念でアーモンドアイに圧勝したようにマイル(1600メートル)が合ってるんだと思うわ。確かに高松宮記念では2着になったんだけど、この時のレースは前半3ハロンが34秒2、後半が34秒5よ。でもグランアレグリアのタイムをみると、前半35秒7、後半33秒1なの。なにが問題かというと、後半は確かに速いんだけど、前半が遅いのよ。昨年のスプリンターズSはなんと前半32秒8、後半34秒3よ。前半がとんでもなく速いのよ。いくら末脚が速くても、ある程度の位置で追走していかないと、最後は届かないということになるわね。追走するということは、途中で力を使うわけだから、末脚も鈍る、そんなことになりかねないわね。マイルとスプリントではスタート直後のスピードが全然違うのよ。マイルが強い馬にとっては、そこが一番の問題ね。
カス丸 ふーん、差しを決めるにもある程度、走っておかないとダメきゃすう。それでカスヨさんの対抗〇はメイショウグロッケなの? とんでも穴馬だじぇい。
カスヨ 人気のうえではトンデモかもね。でも、この馬は前走セントウルステークス(GII、中京、1200メートル)で12番人気で2着よ。まずは騎手の乗り替わりがないことね。それと、前走が初の1200mだったんだけど、しっかり適性を見せたわね。スタート直後から中団につけるスピードもあるし、掲示板に載った5頭(上位5頭)では上がり3ハロン(最後の600メートル)のタイムがトップだったわ。今回は中山最終週だから馬場が荒れて力も必要だけど、メイショウサムソン産駒でパワーのあるこの馬には馬場も助けになる可能性があるわよ。
カス丸 穴狙いのカスヨさんらしい指名だじぇい。爺の対抗〇はライトオンキューきゃすう。こっちはほどほどの人気馬だじぇい。
ガジュマル爺 ライトオンキューは中山コースに実績があるんじゃ。カスヨが気にしておる騎手の乗り替わりはなし。1200メートル戦では、7戦して1着3回2着2回と得意にしておる。それにスプリンターズSと相性がいい今年のキーンランドカップ(GIII、札幌、1200メートル)で2着じゃったし、前めの位置取りでレースができるところが強みで安定感につながっておるんじゃ。
荒れを演出する馬はどれ
カス丸 スプリンターズSは1分ちょっとで決着がつくレースだから、展開一つで荒れるときは荒れるじぇい。去年は1~3番人気で決着したけど、これは珍しいきゃすう。穴馬はどんなのがいるきゃすう?
カスヨ わたしの単穴▲はエイティーンガールよ。この馬はね、3歳時のフィリーズレビューを除いて、一貫して1200メートルだけを走ってきたのね。スプリントのプロ中のプロなのよ。前走キーンランドカップではさっきのライトオンキューを差し切って勝利。しかも鞍上が大舞台に強い池添謙一騎手ときてるから今回は要注意ね。あとはセントウルSで勝ったダノンスマッシュね。この馬はね、底力があるんだけど、なぜか前哨戦には強いけど本番には弱いイメージがあるのよね。今回も騎手の乗り替わりが無ければ重たい印を打とうと思っていたんだけどね。まあ、中山での勝ち鞍もあるし、コース適性には問題が無いと思うんだけど、今年は勝ったレースの次は馬券外になっているから、あっさり負ける可能性もあるかもね。最後にミスターメロディーよ。昨年の高松宮記念勝ち馬ね。その後の活躍が期待されたんだけど、なぜか勝ち星からは遠ざかっているわ。ダート戦に出場したり、マイル戦に挑戦したりといろいろと試しているんだけど、結果がいまいちね。でも前走のセントウルSで久しぶりに3着、復活の兆しね。阪神カップで2着したこともあって、右回りでも好走例があるから軽視はできないわよ。
ガジュマル爺 わしは一昨年の2着馬、ラブカンプーじゃ。その後は低迷が続いておったんじゃが、今年の夏、CBC賞(GIII、阪神、1200メートル)を逃げ切って、ようやく復活してきた。新人の斎藤新騎手がモズスーパーフレアに遠慮せず、思いっきり逃げれば面白いはずじゃ。次にクリノガウディーじゃ。春の高松宮記念は、まぼろしの1着じゃった。直線の脚はアッと驚かせたが、ゴール手前で斜行してしまい4着に降着。2歳時には朝日杯フューチュリティステークス(GI、阪神1600メートル)でアドマイヤマーズ(NHKマイルカップなどGI2勝)の2着がある底力のある馬なんじゃ。先行勢のすぐ後ろにつけるレースができれば、今回は人気薄じゃから面白いんじゃが。最後はビアンフェじゃな。3歳馬で、3勝しているすべてが1200メートルと距離適性はバッチリじゃ。この馬はなんといっても函館2歳ステークス(GIII、函館、1200メートル)が光っておる。このとき、朝日杯フューチュリティステークス2着、京王杯2歳ステークス(GII、東京、1400メートル)やアーリントンカップ(GIII、阪神、1600メートル)を勝ったタイセイビジョンを負かしておるのが大きい。古馬(4歳以上)との初対戦だった前走セントウルSは5着と「壁」に跳ね返されたんじゃが、先行できるし、今回は休み明けの叩き2走目で上積みも大きいはずじゃ。
カス丸 うーん、有力馬が多すぎて目移りするじぇい。でも確かなことは内の2番枠に入ったモズスーパーフレアが超高速で最初から飛ばすということきゃすう。去年は前半3ハロン32秒8、この間の北九州記念では32秒4。32秒台で行くのは間違いないじぇい。今の中山は外差しが決まりやすいから、去年タワーオブロンドンが差し切ったように末脚鋭い馬が勝つ確率が高いきゃすう。タワーが出てれば本命だけど、今年はいないから困ったじぇい。となると、中~外枠に入った差し馬、レッドアンシェル、エイティーンガール、グランアレグリアが有力きゃすう。レッドアンシェルは北九州記念でモズスーパーフレアを差し切って勝ったけど、中山の実績はいまいち。グランアレグリアは中山が初で、追走が問題だとなると、ここは上がり3ハロン32秒台もあるエイティーンガールしかいないじぇい。本命◎でいくきゃすう。