音楽をどれだけ高度化・複雑化できるか
旋律の複雑さ、単旋律でなく複旋律をしようしたハーモニーの出現、そして、リズム。音楽の主要な要素が出揃い、そして、それを楽譜に記入することが可能になったのです。「曲をすべて覚えていなくても良く、楽譜を見て演奏すれば良い」ということになると、一挙に音楽は複雑化しました。
ちょうど13世紀~14世紀のキリスト教会は、「迷宮」を教会内に建築するのが流行となっていましたが、音楽もまた迷宮と言えるぐらいの高度に複雑化したものが生み出されていきます。それは音楽の探求というよりも、どれだけ高度化・複雑化できるか、という技術の試みのような側面も持っていました。
楽譜の登場によって、そしてその改良によって、新たな「音楽を記す方法」が確立されると、音楽は、爆発的発展をしたのです。それは活版印刷が書物にもたらしたのと同じぐらいの革命的な転換で、それほど、「楽譜の発明」が欧州の音楽にもたらした影響は大きかったのです。
本田聖嗣