宗教音楽家たちがリズムやテンポを取り入れる
メロディーが重ねられると同時に、最も初期の楽譜では未整備だった「リズムやテンポを記入する方法」が、次第に洗練されていきます。これは、急速に発展・繁栄するパリの街では、宗教的なもの以外の、いわゆる世俗的な音楽が影響したからです。
現在ではいわゆる「吟遊詩人」と呼ばれている人たちが、宗教とは別のところで、パリの街で音楽を作っていました。恋愛をテーマとし歌ったものがかなりの割合を占めていましたが、それだけ「愛の歌」の需要があったということでしょう。街に滞在するだけでなく、欧州各地を旅して歩いてもいたので、彼らのつくる曲は隣国スペインにまだ残っていたイスラムの音楽などの影響も受けていました。
そして、その生き生きとした音楽・・特にリズムの点において・・・を、あまりそれまでリズムやテンポを重視してこなかったキリスト教の宗教音楽家たちが取り入れていくのです。ペロティヌスなどが、「音符の長さ」を記入していく方法を編み出し、楽譜を改善していきます。現代の記譜法の「小節」を定めてから記入していく方法に比べてまだまだ未熟な点が多々ありましたが、それでも、「リズム」を記入できることになったことは、大きな前進でした。