名古屋港飛鳥ふ頭で、強力な毒性を持つ特定外来生物「ヒアリ」の女王アリ数十匹および働きアリ1000匹以上が発見された。愛知県が2020年9月25日、県公式サイトで発表した。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大とその対策が人々の重大関心事となり、ヒアリの話題はかすみがちだが、このまま国内で生息域が拡大したら一大事だ。ウイルスとは別の次元で大きな害となる恐れがある。
刺されると命の危険も
環境省自然環境局公式サイトの「特定外来生物ヒアリに関する情報」によると、日本で初めてヒアリが確認されたのは2017年6月で、その後も毎年発見の報告があがっている。外来生物のうち生態系や人の生命・身体などに被害を及ぼす恐れがあるものとして国が指定した「特定外来生物」だ。本来は南米の中部に生息するが、空路や海路で海外から持ち込まれた貨物・コンテナに紛れる形で侵入してくるという。
刺されると強い痛みが生じ、体質によっては強いアレルギー反応(アナフィラキシーショック)を起こす恐れがあるほか、ヒトだけでなくイヌやネコなどのペットも重い症状を起こすことがある。また、電線をかじって停電を引き起こしたり、ショートさせたりして火災の原因となることも。このほかにも農業や国内の生態系など、様々な分野に悪影響をもたらすとされる非常に厄介なアリだ。
国内のヒアリ発生の報告は2018年度に12例、2019年に10例、2020年には今回の発見を含め9例が報告されている。2017年6月の初確認から現在まで16都道府県・計57の事例が確認されている。
「すでに定着防止の段階ではない」
今回のヒアリ大量出現のニュースにツイッターでは、「コロナのせいで存在を忘れてた」「災いは忘れたころにやってくる」と改めて危機感を覚えたという声が挙がっている。また、名古屋港でのヒアリ発見を伝えた共同通信9月25日付記事のコメント欄では、
「ヒアリが日本に入ってきてから随分経つのに、今でもリスク管理が定着防止で止まっている」
「すでに定着防止の段階ではなく、ある程度定着しているものと想定して早急に関係各位および民間に協力を求め、大々的な対策を行う必要がある」
と、もはや水際対策を講じるだけでは不十分だとする意見も寄せられている。