「全国のお父さん、お母さん。子供がどんぐりを拾ってくる季節がやって来ましたね」
少しずつ秋めいてきた中、ツイッターには上記のような書き込みが見られるように。子どもがせっかく拾ってきたドングリも、つい持て余してしまう――。そんな中、最近公園や森で拾ったドングリを金銭の代わりに貯められる「どんぐり銀行」の存在ツイッターで話題だ。
落葉広葉樹の森を再生する植樹活動として開始
どんぐり銀行は、利用者が集めたドングリを苗木として交換し、樹木を増やすことが目的だ。子どもが参加しやすい「緑化運動」として、一部の行政や団体が実施している。
高知県大川村では、大川村の自然環境の保全活動事業の一環として、一般社団法人大川村ふるさとむら公社が1996年から取り組みを始めた。J-CASTトレンドが「どんぐり銀行」の活動に携わる、ふるさとむら公社の近藤京子さんに取材すると、もともとは96年以前に香川県が実施していたと説明した。
94年、大川村にある西日本最大級の「早明浦ダム」が渇水の影響で貯水率ゼロになった。原因は針葉樹の人工林だ。雨が降れば一時は雨水がダムに溜まるが、葉が落ちない木々の下には下草が生えず、水を吸収できずに山が砂漠化してしまう。水源地である大川村に水を取り戻すため、落葉広葉樹の森を再生する植樹活動として始めた。
北海道から沖縄まで全国各地にある店舗内に「どんぐり銀行出張所」を設置している。利用者は近くの出張所にドングリを持ち寄り、専用の「通帳」に記帳してもらう。
個人に加え企業や教育機関からも届けられる
1年に1回、ドングリ100個につき「払い戻し」として1本の苗木を受け取れるが、選択する人は少ないと近藤さんは話す。「都会には植える場所がないこともあり、集めたドングリを何かに役立ててほしい、と寄せてくれる方が多いですね」。通帳を作り、ドングリを貯めるという行為自体を楽しむ人や、「環境のためになるなら」と善意で送る人が大半だとした。
集まったドングリは全て大川村に届けられる。そこで苗木に育て、受け取らなかった人の分は「代理植樹」として大川村の「植樹祭」で植えるなどしている。ドングリは他にも、大川村の学校で工作に使ってもらうために提供したり、傷んでいるものは動物のエサにしたりと活用している。10年ほど前にはドングリが100万個集まった年もあったそうだ。
「どんぐり銀行」の通帳登録者は、現在は全国で約3~4万人で、子どもの名前での登録も多い。最近では社会貢献活動の一環として社名で登録し、ドングリを送る企業も多いそうだ。さらには、養護学校や学童からも届くと話した。
ドングリは通年受け付けているが、毎年10月~11月頃が一番多く集まる。近藤さんは、「ツイッターでどんぐり銀行を知った方からお問い合わせもありました。この取り組みを通して、ぜひ山を守ることの大切さだけでなく、大川村についても知ってもらえたら嬉しいです」と明かした。
(2020年9月18日15時追記)内容を一部修正しました。