「感染症」にまつわる新たな報道がインターネットを騒がせている。産経新聞(電子版)が2020年9月16日付記事で、中国において「ブルセラ症菌」が漏えいしたと伝えた。19年夏、甘粛省蘭州の製薬工場で動物用ブルセラ症ワクチンの生産工程でずさんな管理により菌を漏洩させる事故があったと、蘭州の衛生当局が9月15日に発表したという。
新型コロナウイルスの感染が収束しないなか、別の感染症が出てきたとなれば心配だ。ブルセラ症とは具体的にどのような異常を生じるのか。
日本でも年間数件「患者の報告」あり
産経新聞記事によると「今月までに関係者計約2万1000人の検査を進め、約3000人が感染したと確認」しているが、全員に何らかの症状があったかは不明だ。
厚生労働省公式サイトの説明はこうだ。「倦怠感、発熱、発汗、腰背部痛、関節痛、悪寒などインフルエンザ様で、その他、関節炎、リンパ節腫脹、脾腫、肝腫、中枢神経症状が見られることもある」。また合併症として、仙腸骨炎、心内膜炎、肺炎、骨髄炎、膵炎を引き起こす可能性があると言い、「未治療時の致死率は5%程度」。
死亡原因の大半を占めるのは心内膜炎だ。牛や豚、ヤギ、犬、羊の感染症だが、「原因菌が人に感染して発症する」とある。一般的な感染ルートは、
「感染動物の加熱殺菌が不十分な乳・チーズなど乳製品や肉の喫食による経口感染」
で、ヒトからヒトへの感染は極めてまれだ。
国内にいれば安心、ではない。東京都感染症情報センターの公式サイトによると、主な流行地域は「地中海地域、西アジア、アフリカ、およびラテンアメリカ」だが、世界中で発生がみられ、日本でも年間数件の患者の報告がある。予防接種はなく、かかった場合は抗菌薬による治療を行う。
「ブルマとセーラー」ではありません
「ブルセラ症」と聞いて、ツイッターには「ブルマとセーラー服の何かいやらしい物かと思った」と投じる人もいるが、症名は原因菌を発見した軍医にちなむようだ。日本細菌学会の公式サイトに以下の記述がある。
「クリミア戦争中、地中海のマルタ島ではイギリス兵の間でマルタ熱(別名:地中海熱、波状熱)と呼ばれる原因不明の熱病が流行していました。当時軍医として駐在していたディビット・ブルース(David Bruce)が、1887年にマルタ熱患者からしました。この菌はブルースの名にちなんでブルセラと呼ばれています」
新型コロナウイルスだけでなく、20年8月4日に中国国内における感染者が伝えられた「新型ブニヤウイルス」など、状況が気になる感染症が増えている。正しく恐れて予防したい。