いったい誰が、何のために――。
家畜や農作物、果てはトラクター等の機械の盗難被害が相次いでいるのだ。農林水産省は2020年9月3日に公式ツイッターで注意喚起を出した。6月頃から栃木県、群馬県などで、子牛やブタの窃盗事件が発生。トラクターは、埼玉県内だけで18年1月~19年8月に盗難が17件起き、今年も埼玉県南部などで複数被害が出ている。
トラクター盗難の多くは田んぼや畑で発生
農水省は、公式サイト上で盗難を防ぐポイントを公開している。家畜の飼養頭羽数を小まめに確認する、農場出入口、畜舎の施錠を徹底するといった基本的なことを心がけ、農場周辺にネットや柵を設置し、侵入しにくい環境を作ることも重要となる。
トラクターなど機械の盗難の多くは、作物を育てる「ほ場」である水田や畑で発生。防ぐには、ほ場にそのまま放置せずにトラクターはカギがかかる倉庫にしっかりしまうように、としている。
一般社団法人日本農業機械化協会の専務理事・気多正氏に取材すると、盗みの具体的な目的は不明だと話した。
盗まれたトラクターについて、「海外に流れているのではないかとは、よく言われています」。
トラクターには車体番号があり、日本の販売店で購入したものであれば型が記録されている。仮に中古として国内で売りに出しても、そのトラクターの来歴が分かってしまうほか、たとえ車体番号を削っても怪しまれ、リスクが高い。
「機械をばらして部品にすれば、国内でも流通するかもしれません。ただ、うわさや過去に犯人が捕まった例では、海外に流れていたことが多いかなという印象です」
ただ最近の盗難例について現段階では、確証はなく、具体的にどこの国に流れているのか、正確な情報はつかめていない、と気多氏は話す。