楽譜は何を伝えているか(9)

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「楽譜」という概念が変わる?

   まだまだ業界標準などがあるわけではないので、電子楽譜といっても、デバイスにまず1曲全体を読み込んで、そしてそれを1枚1枚表示させ、めくっていく、という電子書籍とおなじパターンで実用化しているわけです。これは、楽譜の黎明期に、やはり書籍と関連が深かった歴史を思い起こさせます。

   今後、紙の楽譜だと大量の重い荷物になるのに、それをわずか1枚のデバイスで代用できるなど、利点を生かしてますます電子楽譜は活躍の場を広げそうです。そうなると、「楽譜」という概念が変わってくるな・・・と思っているのですが、実は、楽譜が発明されたいにしえの時代の欧州でも、楽譜は、大きく音楽の歴史を変えたのです。

   現代は楽譜があるのが当たり前なので、あまりそのことに気づきませんが、前回の連載でグィード・ダレッツォが横に線を引いて、楽譜の原型を作った・・というところまで見てきました。グィードの発明した楽譜から、現代のものになるまでは、まだ長い年月と改良の歴史が必要になるのですが、その経過と、「楽譜」というものが音楽の何を変えたか、を次週から見ていきたいと思います。

   ある意味、現代の音楽は「楽譜が作っている」ものがほとんどだと言え、それ以前の「楽譜がない時代の音楽」とは、大きく成り立ちが異なっているのです。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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