「楽譜」という概念が変わる?
まだまだ業界標準などがあるわけではないので、電子楽譜といっても、デバイスにまず1曲全体を読み込んで、そしてそれを1枚1枚表示させ、めくっていく、という電子書籍とおなじパターンで実用化しているわけです。これは、楽譜の黎明期に、やはり書籍と関連が深かった歴史を思い起こさせます。
今後、紙の楽譜だと大量の重い荷物になるのに、それをわずか1枚のデバイスで代用できるなど、利点を生かしてますます電子楽譜は活躍の場を広げそうです。そうなると、「楽譜」という概念が変わってくるな・・・と思っているのですが、実は、楽譜が発明されたいにしえの時代の欧州でも、楽譜は、大きく音楽の歴史を変えたのです。
現代は楽譜があるのが当たり前なので、あまりそのことに気づきませんが、前回の連載でグィード・ダレッツォが横に線を引いて、楽譜の原型を作った・・というところまで見てきました。グィードの発明した楽譜から、現代のものになるまでは、まだ長い年月と改良の歴史が必要になるのですが、その経過と、「楽譜」というものが音楽の何を変えたか、を次週から見ていきたいと思います。
ある意味、現代の音楽は「楽譜が作っている」ものがほとんどだと言え、それ以前の「楽譜がない時代の音楽」とは、大きく成り立ちが異なっているのです。
本田聖嗣