緒方貞子氏が示した「これからの日本」への期待

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「人間の安全保障」にもつながる指摘

   最近では、コロナウィルス感染問題への論評(「日本モデル vs. 西浦モデル2.0の正念場」シリーズ)がよく知られている、篠田英朗・東京外国語大学教授の専門分野での著作に「平和構築入門-その思想と方法を問いなおす」(ちくま新書 2013年)がある。

   本書は、故・大沼保昭・東大名誉教授の遺著「国際法」(ちくま新書 2018年)で、「平和構築の方法と思想を体系的に描き出すと同時に、国際法が国際政治や人道支援の現場ではたす役割についても考えさせる好著」と高く評価されている。篠田教授は、「第6章 人命救助は平和をつくるのか?―人道部門の平和構築」で、人道援助は「人道的であるがゆえに、集合的な社会の仕組みを中心的には論じないのである」と喝破している。そして、「人間だけでなく、『社会』の改善をふまえた人道援助活動がありうるのか、ありうるとすればどのような形態になるのかは、全て今後さらに精緻化していかなければならない課題であろう」というのだ。緒方氏の現場主義から生まれた「人間の安全保障」にもつながる指摘だ。緒方氏は、これからの日本に対して、「世界は多様性に基づく場所だということを心底から受け止め、自らも多様性を備えた社会に成長していくこと」に期待をかけた。篠田氏は、「緒方氏の訃報に接して、今あらためて学び直すべきなのは、緒方氏の人道主義の信念と同時に、国際政治の中で生き抜く逞しさである」と強調していた(「緒方貞子とは何者だったのか? 激動の世界を生き抜いた逞しさと信念」(2019年11月13日 現代ビジネス)。先週、歴代1位の長期政権の終わりという1つの区切りが見えた今、今後の日本の針路を考える上で、緒方氏の「回顧録」や篠田氏の好著をひもといてみる意義は高いと思う。

経済官庁 AK

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