■『コロナショック・サバイバル』(著・冨山和彦 文藝春秋)
新型コロナウイルスの影響をだれもが受けている。経済的には春の最悪期は脱したようにみえるが、今後の感染動向から目をはせない。また、本格的に需要が回復するのは時間がかかりそうであるし、回復の度合いは業界によって分散が大きい。大がかりな業界、さらには産業の再編が避けられないようにみえる。
危機をグローバルレベルまでで押しとどめる必要性
著者の冨山氏は、2000年代に我が国の産業の再生に力をふるった産業再生機構で中核的な役割を担い、その後も様々な企業の再生等に関わってきた。コロナ禍のなか、著者の指摘は貴重な意味を持つ。冨山氏は、経済への影響は、末端のローカルレベルからはじまり、大企業からなるグローバルレベル、そしてついに、企業部門への貸し手である金融部門(ファイナンス)に及ぶという見通しを立てている。そのうえで、今回の危機をグローバルレベルまでで押しとどめることの必要性を指摘している。さらには、コロナ後に向けて経済構造が大きく変わることを指摘し、それが一段の日本企業の生産性の低迷のきっかけとなるか、生産性向上のチャンスとなるかの分かれ道にあり、企業経営者、政策担当者の賢明な判断を訴えている。
経済の状況は落ち着きを取り戻しつつあるが、ひきつづき必要な感染への対策、今後の国内外の所得減のショック等を踏まえると、今後、グローバルレベルの影響が本格化してくるとの指摘はその通りであろう。今回の危機は、とりあえず、短期的なものとして対処がはじまった経緯があり、資金繰りへの支援をはじめとし、なるべく多くの事業者に手を差し伸べることが中心となってきた。もはや危機が短期のもので済まなくなった今、政策をどうやって、どの程度調整するのか。コロナ禍の日本経済に対する影響を左右する、むつかしい判断はこれからである。
経済官庁 Repugnant Conclusion