もともとの軽薄に手垢が
「顕在化する課題にはスピード感をもって万全の...」(安倍首相、7月30日)
「これからも緊張感をもってコロナにしっかり対応...」(小池都知事、7月5日)
「より一層、緊張感をもって政権運営に当たっていく」(安倍首相、8月6日)
金田一さんが疑義を呈する「〇〇感」は、政界の流行り言葉といってもいい。軽薄な語感に、いまや手垢がつき始めた。言葉の専門家に指摘されるまでもなく、ごまかし、まやかし、その場をしのぎたいという心根の目印、なのだ。
汽車ポッポの歌には、こんな詞が出てくる。
〈スピード スピード 窓の外 畑もとぶとぶ 家もとぶ〉...なかなかの疾走「感」である。75年前の歌詞だから、スピードという言葉は外来語でも古参の部類なのだろう。
スピードこそ進歩、という時代が確かにあった。これに「感」をつけて俗事に多用することで、希望や未来や進歩といった含意を台無しにした罪は、決して小さくない。
冨永 格