「〇〇感」のウソ 金田一秀穂さんはスピード感も緊張感も信じない

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もともとの軽薄に手垢が

「顕在化する課題にはスピード感をもって万全の...」(安倍首相、7月30日)
「これからも緊張感をもってコロナにしっかり対応...」(小池都知事、7月5日)
「より一層、緊張感をもって政権運営に当たっていく」(安倍首相、8月6日)

   金田一さんが疑義を呈する「〇〇感」は、政界の流行り言葉といってもいい。軽薄な語感に、いまや手垢がつき始めた。言葉の専門家に指摘されるまでもなく、ごまかし、まやかし、その場をしのぎたいという心根の目印、なのだ。

   汽車ポッポの歌には、こんな詞が出てくる。

   〈スピード スピード 窓の外 畑もとぶとぶ 家もとぶ〉...なかなかの疾走「感」である。75年前の歌詞だから、スピードという言葉は外来語でも古参の部類なのだろう。

   スピードこそ進歩、という時代が確かにあった。これに「感」をつけて俗事に多用することで、希望や未来や進歩といった含意を台無しにした罪は、決して小さくない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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