連日、30度を超える猛暑の夏が続いている。全国各地で最高気温35度を超える猛烈な暑さが続き、内陸部では40度近くまで上がる所もあるという。
この夏は本来であれば、東京オリンピック・パラリンピックが開催されていた。大会は来年に延期されたが、時期は変わらない。今年同様の猛暑だった場合、日中の競技場は、選手はもちろん観戦する観客にとっても過酷な環境になる。記者は炎天下のなか、東京都内の競技場2か所を訪れて酷暑の観戦をシミュレーションしてみた。
「屋根あり」国立競技場も正午前後は一部で日が当たる
実施時期は、五輪が2021年7月23日~8月8日、パラリンピックが8月24日~9月5日だ。五輪は7月開催の競技がある。今年7月下旬は、都内は比較的涼しかった。だが2019年を振り返ると、7月24日以降は最高気温が連日30度を上回り、7月31日の最高気温は34.6度まで上昇したことを日本気象協会「tenki.kp」のウェブサイトが示している。
記者はまず2020年8月18日、国立競技場(東京都新宿区)を訪れた。東京五輪公式サイトによると、開・閉会式をはじめ、女子サッカーの決勝戦と各種陸上競技が行われる予定だ。到着した午前11時ごろの気温は33度で、多少風があったもののかなりの暑さを感じた。
最寄り駅の都営大江戸線「国立競技場駅」のA2出口を出ると、競技場はすぐ目の前だ。実際に中には入れなかったが、日本スポーツ振興センター(東京都港区)に電話取材をすると、広報室の安藤悠太さんは「例えば国立競技場駅A2出口から競技場北側の千駄ヶ谷門付近の観客席までは、おおよそ歩いて10分程度」とのことだった。暑い日も、移動に10分ほど歩くことになる。
国立競技場の観客席は全体的に屋根に覆われているが、記者が訪れた午前11時ごろは太陽が競技場の南東の空に位置しており、位置や時間によっては北西サイドの客席は日光にさらされる可能性もある。安藤さんは「正午前後には、千駄ヶ谷門付近の観客席のグラウンドに近い部分に日が当たる」と説明した。
競技場内に入れないため、熱中症対策を十分とったうえで25~30分ほどかけて外周を散策し「屋根なし観戦」の気分を味わってみた。日差しは強く、アスファルトの地面は数秒触っただけで手がひりつく熱さだ。帽子を被る、熱せられた客席にタオルを敷いて座る、などの対策を講じなければ、長時間の観戦は辛いように感じた。
バス停から競技場の中間付近で汗だく
翌8月19日は、ボート競技とカヌー(スプリント)競技が行われる海の森水上競技場(東京都江東区)を訪れた。午前10時半ごろに最寄りのバス停である「環境省中坊合同庁舎前」に到着。天気は晴れ、気温は31度だった。競技場へはこのバス停から25分ほど歩いて向かうこととなる。記者も徒歩で会場を目指した。
しかし、競技場へと続く水路沿いの道にはコンビニエンスストアや自動販売機は一切なく、休めそうな木陰もほとんど見当たらなかった。炎天下の中をひたすら歩き、バス停と競技場との中間地点あたりに位置する「海の森大橋」にたどり着いたときは汗だくになった。
大橋を過ぎて少し進むと、「西ゲート封鎖中」の文字。海の森水上競技場管理事務所の担当者に問い合わせたところ、この西ゲートから観客席までは「徒歩でおよそ15分~20分ほど」とのことだった。既に汗ダラダラなのに、さらにここから20分近く歩くのか......。
それ以上は先に進めないようだったので、再びバス停への道を引き返した。
大橋の上から遠目に眺めた海の森水上競技場は、現在はほとんど屋根のない野外会場のようだった。東京2020組織委員会(東京都中央区)広報担当者に熱中症対策について取材すると「屋根がない観客席には、現時点では日差しを避けるためのクールオフスペースや、水分補給のための水飲み場を設置する予定」だという。
競技場での観戦に加えて最寄り駅からの往復と、酷暑の夏にはかなり過酷なものになるだろうと、記者は実感した。