クウネル世代の所作
全ページのほぼ8割を埋めるこの特集について、編集部は冒頭でこう触れている。
〈未知のウイルスの登場で、暮らし方、働き方がガラリと変わりました。いままでとはちがう生活様式が求められることも多々ですが、過度に不安になる必要はありません。基本的なルールは守りつつも、暮らしの根幹は揺るがすことなく、自分なりの心地よさを大切に穏やかに、安らかに暮らしていきたいですね〉
なぜそんな特集をいま組むのかといえば、同誌の主たる読者層が〈年を重ね、経験を積み、「私らしさ」が確立されている...だからこそ、暮らしを気持ちよく整える術を熟知している〉中高年だからである。
つまり「読者の皆さんには釈迦に説法となるが、何かと不安なコロナ後も蓄積を生かし、自信を持って生きましょう!」というエールだと読んだ。
エッセイストの松浦さんは「暮しの手帖」の元編集長。同世代かと思いきや、私より9歳も若い。「自分や他人、社会に期待し過ぎない」などと言われると、つい「そんなに老成しちゃダメ」「社会には期待しましょう」「納税分くらいの権利は主張しようよ」と言いたくなる向きもあろう。私もその一人なのだが、鎧をつけてガシャガシャと世を渡るより、柳に風でいくほうが長持ちするのかもと、ここは「全肯定」でやりすごした。
それがクウネル世代の所作なのだろう。編集部や執筆陣、固定読者...テレビやネットと違い、閉じてはいるが内部では心地よいという、雑誌ワールドがそこにある。
冨永 格