「近大ウナギ」人工ふ化・初期飼育成功から9か月 取材で分かった紆余曲折の歩み

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   今年(2020年)は、「土用の丑の日」が2回ある。7月21日と、8月2日だ。今度の日曜日は、おいしいウナギに舌鼓といきたいところ。

   近年はニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)の漁獲量が減少し、「将来ウナギが食べられなくなるのでは」との不安も。そのなかで2019年11月1日、近畿大学水産研究所(和歌山県白浜町・以下、近大水研)がウナギの人工ふ化、および50日の初期飼育に成功したと発表した。あれからおよそ9か月、研究はどうなっているのだろうか。J-CASTトレンドは近大水研浦神実験場(和歌山県那智勝浦町)の田中秀樹教授に取材した。

  • 研究が行われている浦神実験場(以下、写真提供は近畿大学水産研究所浦神実験場より)
    研究が行われている浦神実験場(以下、写真提供は近畿大学水産研究所浦神実験場より)
  • 採卵直前のメス親ウナギの写真。後ろの数字単位はセンチメートル(2020年4月22日撮影)
    採卵直前のメス親ウナギの写真。後ろの数字単位はセンチメートル(2020年4月22日撮影)
  • 先の写真のメスから採卵した卵のふ化の写真
    先の写真のメスから採卵した卵のふ化の写真
  • 研究が行われている浦神実験場(以下、写真提供は近畿大学水産研究所浦神実験場より)
  • 採卵直前のメス親ウナギの写真。後ろの数字単位はセンチメートル(2020年4月22日撮影)
  • 先の写真のメスから採卵した卵のふ化の写真

研究と飼育の並行には飼育施設が小さく狭かった

   ウナギの完全養殖(人工的にふ化させた稚魚を親としてさらに次世代を生産すること)は、以前から近大水研を含め大学や研究機関が挑戦するも成功しなかった。それだけに近大水研の発表は大いに注目された。

   田中教授は、「現在国内で消費されている国産ウナギの99%以上は養殖に依存している」とし、ウナギ養殖の元種となる種苗(稚魚のこと)はすべて、シラスウナギと呼ばれる天然の稚魚が用いられていると説明。しかし近年、漁獲されるシラスウナギの量が著しく減っているためウナギ養殖に必要な「種苗」の確保が課題となっており、一日も早い完全養殖の実用化が望まれているという。

「2019年3月、浦神実験場でウナギの人工種苗生産をめざして研究を再開しました。養殖ウナギを雌雄の親魚候補として6月から人工的に成熟を促進し、9月と10月にはそれぞれの月で約数万尾の仔魚(しぎょ、稚魚の一段階前の状態)がふ化しました。ふ化仔魚の一部にふ化後7日目から餌を与えたところ、同年11月1日時点で50日齢の仔魚約20尾、43日齢約100尾、28日齢約1000尾が順調に成長したので、プレス発表をさせていただきました」

   しかし、昨年度にふ化した仔魚はその後徐々に数を減らしていき、最長飼育期間149日、最大全長37ミリメートルという記録を残して、2020年4月までに全滅してしまった。田中教授は全滅までの期間を振り返り、研究と飼育を並行して進めるには飼育施設が小さく狭かったことや、大雨により海水塩分が低下したことなど、いくつかの問題点が明らかになったと話した。

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