スターダストレビュー「年中模索」
「今までと同じようなアルバムを作ってどうする」

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全てを任せて信頼出来るパートナー

   スターダストレビューを以前から聞いている人には「メッセージ」という言葉に居心地の悪さを感じたりするかもしれない。

   根本要もこう言った。

   「僕らの音楽にメッセージは必要ない、楽しく音楽を聴いてほしい。ラブソングを歌うことが使命感だと思ってましたからね。それが僕らの弱点でもあった。ただ、言いたいことはたくさんある。それを込めようと思ったんですね」。

   大人になるということは社会性に目覚めてゆくことでもある。アルバムの中核の「大人の背中」と「約束の地へ」はまさにそんな二曲だ。今、自分たちを取り巻いている「大人」たちへの幻滅。子供の頃に「地球は青かった」と言った最初の宇宙飛行士ガガーリンの言葉に描いた地球の希望的な未来と21世紀の現実の落差。「思ったことを歌えばメッセージになる」。それは「作家的開眼」と言えないだろうか。J-POPの基礎を作った作詞家、永六輔を思わせる平易で日常的な「同級生」は、「一番の理解者で仲の良かった高校の同級生がなくなった」ことがきっかけだった。そこにも同世代に向けた「メッセージ」が綴られている。

   なぜ、そんな風に自然体で「メッセージ」が歌えるようになったのか。「還暦少年」でもタッグを組んだプロデューサー、ギタリストの佐橋佳幸の存在を抜きにしては語れない。山下達郎のステージメンバーとしても知られている。

   「どうだ、と佐橋を唸らせたくて、凝って作った曲が却下される。余計なことを考えずに思いのままに作ってあいつに任せておけばいいと思ったら、バカバカ出来る(笑)。ここ数年曲を作るのがこんなに楽しいと思えたことがない。新境地に入ったみたいですね」

   もし、どこかで爆発的に売れていたら、今になって何物にも縛られずこんなに自由に音楽を作れてないのではないだろうか。それが「売れなかったことが僕らの『運』」という言葉につながっている。

   でも、「売れるための条件」には、もう一つの要素が必要と言っていいかもしれない。

   それは「全てを任せて信頼出来るパートナー」の存在だろう。そのことで「売れる」ということよりも大切な「自由」を手にすることが出来る。デビュー40周年の新作「年中模索」は、その証明のようなアルバムになった。

   

   彼らが、今、改めて「模索」していること。ライブ・バンドとしてこのライブ受難の時代をどう生き抜くかという大命題。10月からは過去最大級の40周年ツアーが予定されている。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール
タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーティスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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