シンガポールが感染症の「二重苦」に見舞われている――時事通信社が2020年7月26日に伝えたのは、新型コロナウイルス感染拡大に加え、蚊によって媒介する「デング熱」も大流行している状況だ。シンガポール国家環境庁が「今年のデング熱感染者数は2013年に記録した過去最多(2万2170人)を上回るだろう」と警告しているという。
デング熱は日本にとって決して「対岸の火事」ではない。2014年には東京都渋谷区の代々木公園でデング熱のウイルスを持つ蚊が見つかり、感染者数が100人を超えて全国に広がった。日本国内で罹患する恐れもあるのだ。
昨年も海外渡航歴ない10代男女が発症
「目の奥が痛くなったのと頭痛もひどくかったです。吐き気や寒気もすごくて、羽毛布団にくるまって寝ていました」
14年にデング熱にかかり、入院したタレント・紗綾さんの体験談だ。同年8月21日に「王様のブランチ」(TBS系)のロケで代々木公園を訪れて虫取りをした際に、蚊に両足を33か所、手も数か所刺され、1週間後に38.8度の高熱が出た。「毛細血管が内出血しちゃって、脚全体が真っ赤に腫れ上がる感じ」、「手のひらは真っ赤になって倍ぐらいの大きさになった」と、つらい症状が出るようだ。
国内での過去の感染については、厚生労働省の公式サイトに情報がまとめられている。14年以降は、16年に「海外から帰国した方がデング出血熱を発症し、死亡する事例が発生」したとある。直近では19年にも「国内でデング熱に感染したことが確認された患者が報告」された。海外渡航歴がない10代の男女で、2人は同じ学校に通っていた。発症後、都内の医療機関に入院し、どちらも1週間前後で無事に退院している。
特別な治療法や予防接種なし
デング熱にかかってしまった場合はどうなるのか。東京都感染症情報センターの公式サイトによると「特別な治療法はなく、症状に応じた対症療法が行われる」。典型的な症状として、以下のようなことが見られる。
「蚊に刺されてから2日~15日(多くは3~7日)の潜伏期間の後、高熱(38~40度)・頭痛・眼窩痛・関節痛・筋肉痛・発しんなどを呈します。症状は1週間ほどで回復します。ごく稀に重症化して、出血症状やショック症状を呈するデング出血熱を起こすことがあります」
なおデング熱には、予防接種もない。デングウイルスを持っている蚊に刺されることで感染する。現状では海外のデング熱流行地域に渡航する人はまれだと思われるが、国内にいても「蚊に刺されない」工夫が必要だ。