「朝鮮通信使」の歴史が教える「日韓平和」のあり方

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雨森芳洲が示した外交の真髄とは

   日朝外交に尽力した雨森芳洲が61歳のときに著わし、対馬藩主に提言した『交隣提醒』(こうりんていせい)という指南書がある。その最後に〈誠信の交わり〉について述べ、芳洲は〈実意と申す事にて、互に欺(あざむ)かず争わず、真実を以て交わり候(そうろう)を、誠信とは申し候〉と説いている。仲尾はこの言葉にこそ外交の真髄(しんずい)があるという。

「互いに欺かず、争わず、真実をもって交わることが大切であると。さらに芳洲は、相手をよく知り、互いの違いや文化をありのまま認め合うことを信条としている。その心はまさに多文化共生の在り方そのものでしょう」

   公益財団法人韓昌祐・哲文化財団の助成事業で朝鮮通信使資料の再検証に携わった仲尾は、その経緯と意義を共著『ユネスコ世界記憶遺産と朝鮮通信使』(明石書店)に著した。

   2017年11月の京都大会をはじめ、朝鮮通信使ゆかりの地では全国交流会が行なわれ、また日韓の研究交流も活発化してきた。さらには日韓の間に200年以上にわたる「誠信外交の歴史」があったことを学校教育の中で子どもたちに伝えていくこと。それが多文化共生社会で生きるための礎(いしずえ)になることを願っている。(敬称略)

(ノンフィクションライター 歌代幸子/写真 菊地健志)

公益財団法人韓昌祐・哲文化財団のプロフィール
1990年、日本と韓国の将来を見据え、日韓の友好関係を促進する目的で(株)マルハン代表取締役会長の韓昌祐(ハンチャンウ)氏が前身の(財)韓国文化研究振興財団を設立、理事長に就任した。その後、助成対象分野を広げるために2005年に(財)韓哲(ハンテツ)文化財団に名称を変更。2012年、内閣府から公益財団法人の認定をうけ、公益財団法人韓昌祐・哲(ハンチャンウ・テツ)文化財団に移行した。

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