近年、豪雨や台風による深刻な水害が多発する日本。自宅での生活が困難になった場合、極めて重要ながら意外と見落としがちなのが「トイレの確保」だ。
J-CASTトレンドはNPO法人日本トイレ研究所代表・加藤篤さんに、災害発生前の事前準備として何ができるかを前回聞いた。後編の今回は発災後、避難生活におけるトイレについてだ。(聞き手はJ-CASTトレンド・荻 仁)
避難所のトイレで新型コロナ対策どうする
――過去の災害時に発生した、避難時におけるトイレや排せつに関する問題を教えてください。
加藤 断水等で水洗トイレが使えないことに気づかずに使用してしまい、便器が大小便で満杯になるなど劣悪な状態になることが少なくありません。
トイレが不便、もしくは不衛生になると、私たちはできるだけトイレに行かなくて済むように、水分摂取を控えがちになります。そうすることで、脱水症などで体調を崩し、エコノミークラス症候群で命を落とすケースもあります。また、劣悪なトイレは感染症の温床にもなります。このように、被災者に健康被害をもたらすのがトイレ問題の本質です。
(避難所や避難先で)女性や子どもは真っ暗な中、屋外のトイレに行くのは怖いと思います。また、雨の日、暑い日、寒い日は、屋外のトイレに行きづらいと感じるのではないでしょうか。
――避難所のトイレは共用で、汚れるのがストレスです。できるだけ清潔に使う方法は。
加藤 排せつや、トイレを清潔に保つことの大切さを避難者全員で共有する必要があります。全体でこうした情報をシェアし、ポスターを掲示する。また、トイレの困りごとなどを相談できる窓口(男女共同で運営)を設けるのも重要です。避難者の意見を聞き、その意見が反映されている状態をつくると、運営がうまくいきます。
日常のトイレ掃除は避難者を班分けするなどして、全員で取り組むようにします。定期的に業者等による衛生面に配慮した清掃を行うことも効果的です。
――トイレ共用だと、新型コロナウイルスの接触感染が不安です。
加藤 定期的な清掃や消毒、換気の徹底が求められます。ただし、清掃や消毒には限界があります。やりすぎて疲弊しては本末転倒です。そのため、トイレ使用後の一人ひとりの手洗いや手指消毒の徹底が大事です。
家が浸水したらにバケツで水流してはダメ?
――そもそも携帯トイレの持ち合わせがない場合、代用できるものはありますか。
加藤 携帯トイレは、大小便を吸収もしくは凝固することで安定的に保管できるようにするのが主目的です。大小便を液状のまま保管することは好ましくありません。代用には、大小便を吸収できるようなものが考えられます。分かりやすい例として、おむつや尿とりパッドが挙げられます。これらをポリ袋の中に敷いて使用するのはどうでしょうか。
市町村に確認する必要がありますが、携帯トイレは可燃ごみと同様の方法で処理されることが多いと思います。代用のものを考える際、可燃ごみとして処理できないものは避けてください。
また、支援物資として携帯トイレを要請することも必要です。
――戸建てで浸水、あるいはマンションで断水した場合でも、トイレ使用後にバケツで水を流して処理してはいけませんか。
加藤 浸水時は、下水道や浄化槽、排水管内が満水になっている恐れがあります。このような状況で水を流すと、下階の便器等から跳ね出しやあふれることが危惧されるので、状況がわからないときはバケツで流さないでください。
――在宅避難だと、携帯トイレ使用後に大小便の入った袋の処理に悩みます。マンション高層階に住む場合、停電でエレベーターが止まればゴミ捨て場まで行くのも困難で、袋がたまってしまう恐れがあります。衛生上、どう扱えばよいでしょうか。
加藤 携帯トイレは、臭気を抑制する成分が含まれているもの、臭気が漏れにくい素材を使用しているものを購入することをおすすめします。その上で、密閉できる容器等に入れてベランダ等に保管するのがよいです。ただし、たくさん溜めるとかなりの重量になるので注意してください。マンション全体で、保管やごみ出しの方法を話し合うことも必要です。
昼間、屋外に設置された仮設トイレを使用できれば、携帯トイレのごみの発生量を減らせます。
こちらのサイトでは、携帯トイレの吸収量や臭気対策の有無など、性能に関する情報が公開していますので、参考にしてください。