学歴詐称の赤い靴 野原広子さんは「踊り続ける人生」を2年で降りた

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一生それで通すしか...

   学歴や職歴に限らず、うっかり見栄を張った「自己紹介」があとで重くのしかかることはままある。年齢、出身地、親兄弟や配偶者の素性、交友関係...個人的な魅力や値打ちにはさして関係のない要素が、やがて自分を苦しめることになる。

   社会的地位を得て世評が定まるにつれ、周囲の視線、メディアのチェックはおのずと厳しくなるもの。自業自得といえばそれまでだが、「だって、こんなに有名になるとは思わなかったんだもん」というのが「詐称」当事者の本音に違いない。

   「うまくいきすぎた学歴詐称」という表現、なるほどと思った。若いうちにバレることがなく、どこかで訂正するチャンスにも恵まれず、「略歴」の重要部分として定まってしまう。公人であればあるほど、人生が終わるまでそっちで通すしかない状況である。

   そうなる前に「赤い靴」を脱ぎ捨てた野原さんは自分に正直なのだろう。そして、それをネタに一本書いてしまう図太さこそ、オバ記者を自称できる所以と見た。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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