記録的な大雨による河川の氾濫、洪水で熊本県をはじめ九州地方を中心に甚大な被害が出た。近年は、2017年に九州北部豪雨、18年には西日本豪雨と毎年のように7月初旬に大きな水害が起きている。さらに2019年は9月に台風15号、10月に台風19号が東日本を襲った。
自宅が浸水被害に遭えば、もちろん生活に大きな支障が出る。食事や水、懐中電灯等の準備をしている人は少なくないだろうが、トイレの備えはどうだろうか。用便だけは誰にも代わってもらえない。J-CASTトレンドはNPO法人日本トイレ研究所代表・加藤篤さんに、災害時におけるトイレについて話を聞いた。今回は、事前準備編だ。(聞き手はJ-CASTトレンド・荻 仁)
携帯トイレは何個準備すればよい?
――災害発生前からトイレについて意識している人はどのぐらいいますか。
加藤 2018年に、東京都および大阪府の2000人に「大地震におけるトイレの備えに関するアンケート調査」を行いました。その中で、「あなたが現在、防災グッズとして自宅に備えているものを全てお選びください」と質問をしたところ、「災害用トイレ」と回答した人はわずか16.9%でした。「飲料水」と回答した人は60.2%でしたので、災害時のトイレの備えがいかに少ないかが分かります。多くの方は災害時にトイレが使えなくなることに気づいていないのだと思います。
――浸水被害が発生しそうになったら、トイレについて気を付けておくべきことは。
加藤 「浸水する」とは、下水道や浄化槽、地下に埋設されている排水管が満水になるということです。そのため、浸水時に水洗トイレに水を流したとしてもうまく流れていかない、もしくは逆流してしまう恐れがあります。また、上階で水洗トイレを使ってしまうと1階の便器から汚水があふれてしまうケースも考えられます。
浸水被害が発生しそうな場合、水洗トイレを使うのを一旦やめて、状況が把握できるまで携帯トイレを使用することが必要です。
――では携帯トイレは1日当たり何個、何日分準備しておけばよいでしょうか。
加藤 自分が1日に何回トイレに行くかを数えてみてください。それがあなたにとっての必要回数です。国のガイドラインには、目安として1日5回となっています。また、防災基本計画では、備蓄日数は最低3日間、推奨7日間となっていますので、3日間だと15回分、7日間だと35回分が必要となります。