TUBE「日本の夏からこんにちは」
集まれなかった2020年の記録

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「ずっとステージにいられるわけじゃないんだ」

   同じ夏でも年齢によって感じ方が変わってくる。「あー夏休み」の中で歌っていたように、「水着の切れ込み」に目移りする時期にはとっくに過ぎてしまっている。あの夏はもう帰らない。あの日には戻れない、と思うようになったからこそ感じる夏の太陽への愛おしさ。アルバム「日本の夏からこんにちは」には50代の半ばに差し掛かっているからこその「夏」が、様々な切り口で歌われている。

   「若い頃も今しかないんだ、と思ってましたけど、老いたらもっと強くそう思うんですね。ずっとステージにいられるわけじゃないんだなとか。今年は特にそう思わされますね」

   アルバムには7月に行われるはずだった5年ぶりの甲子園球場でのイベントと9月に予定されている恒例の横浜スタジアムが歌いこまれている「知らんけどfeat.寿君」と「湘南バットボーイ」もある。2020年の夏をどう迎えるか。ジャケットには浴衣姿の4人を中心に35年間のそれぞれの写真がコラージュされている。でも、4人が並んだアーティスト写真もジャケットも一か所に集合して撮ったものではない。4人が自撮りした写真を合成した「リモート写真」である。「集まれなかった2020年」の記録と言っていいだろう。そういう時期を経ての歌入れで全員が泣いたのが一曲目の「日本の夏からこんにちは」だった。

   ポップミュージックは時代を映す鏡のような音楽である。去年の12月に始まったレコーディングで演奏は先に収録されていたから完成した。歌入れが行われたのが4月からだ。最後の曲「Route567」は、そんな時期だからこそ生まれた歌だったことになる。

   「2020年は、そういう楽曲が出てくるでしょうね。僕も、皆さんがこの状況をどう捉えただろうと思いますし。僕たちは2020年の4月にこういう状態でいました、というアルバムですね。「Route567」も、サブタイトルに2020年4月13日とつけたいくらいです」

   「Route567」には、こんな歌詞もある。

   「あきらめずにこの道を
未来へと進むしかないんだ」
「長いこと忘れてた
熱いもの この頬を伝う」
「君の中の空に
あの夏の光が戻るまで」

   あの夏へはもう戻れない。

   でも、新しい夏はやってくる。

   中止になってしまった甲子園球場ライブは来年の開催が模索中だ。もし、9月5日の連続31回目、通算33回目となる横浜スタジアムが無事に行われる時、どんな笑顔と涙が待っているのだろうか。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール
タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーティスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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