一人前の聖歌隊員にするには10年以上
10世紀ごろには、完全にレパートリーが整った教会の聖歌・・繰り返しますが、現代では「グレゴリオ聖歌」と呼ばれていますが、グレゴリウスI世とはあまり関係がありません・・・は、昇階唱、入祭唱、詠唱、奉納唱、聖体拝領唱、応唱、校唱など、それぞれの場面にふさわしいカテゴリーに分けられ、1曲は2~4分ぐらいと短くはあるものの、曲数はカテゴリーごとに100曲以上もありました。これが「正式なもの」として認定されたのです。トータルで、数千曲、そして、不眠不休で歌ったとしても80時間は優にかかるという膨大なレパートリーです。
教会に礼拝に来る一般市民は、聖歌を多少間違って歌っても許されるかもしれませんが、専門家たる修道士はそういうわけにはいきません。歌う場所も自分のフランチャイズである修道院から、移動しては、近くの教会の数々、遠くの大聖堂・・と様々場所であり、そこで正確な歌唱が要求されるわけです。
一番問題なのは、それをどうやって、新しい修道士の聖歌隊員に教え込むか、ということでした。レパートリーが決まったわけですから、教会の伝統として後輩に受け継がなければならないのです。一緒に歌って、メロディーとリズムを一曲一曲教え込む、という丁寧な作業を行って、一人を一人前の聖歌隊員にするには、どう少なく見積もっても、10年以上かかりました。確かに、「80時間分、カラオケのレパートリーを覚えよ」と言われたら、10年ぐらいはかかりそうです。
歌詞は紙に記して「これを覚えておくように」と自習させることができますが、楽譜がない時代、正確に歌を教えるには、口伝しかないわけですから、仕方ありません。