楽譜は何を伝えているか(6)

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一人前の聖歌隊員にするには10年以上

   10世紀ごろには、完全にレパートリーが整った教会の聖歌・・繰り返しますが、現代では「グレゴリオ聖歌」と呼ばれていますが、グレゴリウスI世とはあまり関係がありません・・・は、昇階唱、入祭唱、詠唱、奉納唱、聖体拝領唱、応唱、校唱など、それぞれの場面にふさわしいカテゴリーに分けられ、1曲は2~4分ぐらいと短くはあるものの、曲数はカテゴリーごとに100曲以上もありました。これが「正式なもの」として認定されたのです。トータルで、数千曲、そして、不眠不休で歌ったとしても80時間は優にかかるという膨大なレパートリーです。

   教会に礼拝に来る一般市民は、聖歌を多少間違って歌っても許されるかもしれませんが、専門家たる修道士はそういうわけにはいきません。歌う場所も自分のフランチャイズである修道院から、移動しては、近くの教会の数々、遠くの大聖堂・・と様々場所であり、そこで正確な歌唱が要求されるわけです。

   一番問題なのは、それをどうやって、新しい修道士の聖歌隊員に教え込むか、ということでした。レパートリーが決まったわけですから、教会の伝統として後輩に受け継がなければならないのです。一緒に歌って、メロディーとリズムを一曲一曲教え込む、という丁寧な作業を行って、一人を一人前の聖歌隊員にするには、どう少なく見積もっても、10年以上かかりました。確かに、「80時間分、カラオケのレパートリーを覚えよ」と言われたら、10年ぐらいはかかりそうです。

   歌詞は紙に記して「これを覚えておくように」と自習させることができますが、楽譜がない時代、正確に歌を教えるには、口伝しかないわけですから、仕方ありません。

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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