4分間に閉じ込められた南国の風景と憧れ
ピアノ曲においても、大胆なハーモニーなどを使い、革新的な技法を用いて、フランス音楽の新たな地平を開いたドビュッシーが、イタリア南部の風光明媚な島を思い浮かべて書いたこの作品は、冒頭、どこからか聞こえてくる笛の音、もしくは風の音から始まり、そこに南国ならではの太陽が差し込む、そんな雰囲気で始まります。吹き抜けていく風の中に、島の歌が聞こえる・・そんなパッセージの後、中間部では、対岸のナポリの船頭たちが歌うナポリ民謡らしき歌が聞こえてきます。再び、カプリ島を吹き抜ける風らしき音楽の後、クライマックスがやってきて、最後は、南国の太陽の強い光が丘を照らす・・・そんな感じで輝かしく曲は閉じられます。
前奏曲集の中の1曲ですから、わずか4分程度の短い曲ですが、その中に閉じ込められた南国の風景と、そこへの憧れは、一瞬ですが、現地にいるよう錯覚さえもたらしてくれます。フランス人ですが、イタリア留学経験もあり、かつ、外国文化に対する好奇心も旺盛な円熟のドビュッシーが描いた、今だからこそ聞きたい一曲です。
本田聖嗣