復元模写を韓国で紹介、母国に正しい技法を伝える
韓国の高麗仏画専門家を交えたギャラリートークも開催した。韓国でも復元模写はあるが、いろいろな国の技法を取り入れていて、中には正しくない材料の使い方がされているケースもあるという。
「基礎がちょっと弱いですね。でも最近では、できるだけ描かれた当時の技法を取り入れようという雰囲気が出てきています」
金はこれからも韓国でシンポジウムやワークショップを開き、間違った技法を正していきたいと考えている。
「それが私の仕事だと思っています」
画家としての創作活動に意欲はあるのだろうか。
「そうですね。韓国と日本には異なる彩色技法があります。私にはそれがわかります。韓国はこれ、日本はこれとはっきり分けて、どちらも生かした創作活動をしていきたいですね。高麗仏画が何百年も大切にされ、評価されているのと同じように、私の作品が500年先に評価されるものになったら嬉しいです」
かつて、描いた絵が雨に濡れただけでダメになってしまったのは材料がよくなかったからだ。日本では材料についても深く研究することができた。
金は高麗仏画の研究者としてだけでなく、芸術家として長く評価される作品を残すためにも、さらに日本での活動も深めていきたいと願っている。(敬称略)
(ノンフィクションライター・千葉望/写真・渡辺誠)