■『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?-結婚・出産が回避される本当の原因』 (著・山田昌弘 光文社新書)
1990年代のはじめに「少子化」という問題が認識されてから(「少子化」という言葉もこの頃つくられた)およそ30年。合計特殊出生率は2005年の1.26を底に2015年には1.45まで上昇したが、その後毎年0.1ポイントずつ低下して2018年は1.42となり、2019年は1.36と大きく低下した。
2019(令和元)年の出生については、いわゆる令和婚(令和元年に結婚するために2018年の結婚を先延ばしにした)という一時的な低下要因の影響が指摘されているが、それを差し引いても、低い出生率の水準をなかなか脱することができない状況が続いている。
これまでの少子化対策をどのように受け止め、これからどうすれば良いだろうか。
多少の期待もあったが
出生率が緩やかに上昇した頃(2015年の出生率が公表された2016年頃まで)には、これまで講じられてきた少子化対策の効果が一定程度は現れているのではないか、これからも多少は期待できるのではないかといった雰囲気があったように思う。
しかし、筆者は、「対策によって悪化を『食い止めた』とも言える」が、「出生率は大きく回復することなく、1.5以下の状況」が続いており、「『若者の出産行動を変える』ことには成功していない」として、少子化対策は事実上失敗に終わっているという。「対策に取り組んではいる」「少しずつ前進はしている」しかし、「対策が『功を奏しているとは言い難い』状況にある」のが「現実」という指摘だ。