楽譜は何を伝えているか(5)

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「必要条件」が揃って楽譜が生まれる土壌が整った

   整理していくと、

1. 録音機が発明される前であること・・・音楽そのものを記録できる現代がいち早くやってきていたら、おそらく今のような形の楽譜は出現しなかったと思われます。

2.録音できないが、たくさんの、長い音楽を誰かに伝える必要があること・・・現代のカラオケのレパートリーぐらいならば、みんな楽譜なしに覚えられます。それを遥かに超える「長さ」と「量」の音楽を一人が覚えなければならない、という状況があれば、音楽を紙に記録する必要性が出てきます。

3.即興性や、個人による音楽の改変が許されない状況であること・・・音楽は多くの場合「楽しむ」ものであるため、自由な改変は当たり前でした。他人の作った音楽を1音たりとも変えずに再現して演奏する・・などというのはかなり特殊な場合だったのです。

4.たくさんの人が、同時に音を出す音楽が必要になること・・・団体行動でもそうですが、個人行動の自由を認めていては、なかなか揃わないものです。集団での音楽、つまり声の音楽における「合唱」が必要になってくると、楽譜のようなものがないとかなり不便ということになるわけです。自然に発生した世界の様々な文明の音楽・・・日本も含めて・・・はほとんど「単旋律」、つまりメロディーだけでできていました。違う音を重ねた音楽を日常的に楽しんでいたのは、ごく限られた文明だったのです。

   まだまだ必要条件は考えられるのですが、大まかには、これらの状況が揃って、楽譜が生み出される土壌が整った、と言えます。厳しいキリスト教会が支配する中世の欧州でこれらの条件が揃ってくるのですが、その欧州でさえ、現代につながる楽譜を生み出すには、何百年という長い時間がかかったのです。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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