玉石混交、まだ時代のフィルターにかかっていない
コンピュータ音楽の中には、テクニックが先行し過ぎて、人によっては付いて行けない作品もある。それについて小坂はこう言う。
「それは仕方のないことだと思います。いま私たちが聞いているクラシック音楽は、時代の風雪に耐えて残った作品です。クラシック音楽約500年の歴史には、評価されずに消えていった音楽は無数にあったはずです。私たちはそれを知らないだけ。コンピュータ音楽は、まだ時代のフィルターにかかっていないので、玉石混交になるのは当然です」
2020年11月6日、東京交響楽団により、オーケストラによる公演が行われる予定である。ここでは、コンピュータは直接使われないが、音の錯覚現象、という音響の科学的知見に基づいた作品を発表するとのことである。チャレンジングな企画であるが、新型コロナ感染拡大の影響で現在開催が危ぶまれている。しかし、これからも、新しい試みを続けていくという。(敬称略)
(ノンフィクションライター・西所正道/写真・菊地健志)