世代間問題を考える基本書

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■『世代間衡平性の論理と倫理』(編・鈴村興太郎 東洋経済新報社)

   社会選択理論において、我が国というよりは世界的な牽引者であった鈴村教授が、晩年非常に力を注いでいた研究分野に「世代間の問題をどう考えるか」がある。本書は鈴村教授が、その門下生を含む経済学者と我が国の一線の哲学者による論文を編んだものである。2006年の出版であり、多少古くなったものの、本書で議論されていることは、世代間問題を考える経済学者や哲学者にとって参照すべき共通の基礎ともいうべきものとなっている。

割引の是非について

   なかでも、鈴村教授による第1章「世代間衡平性の厚生経済学」は、将来起こる効用を割り引くか否かという点について、理論的に矛盾したふたつの考え方があることを示し、興味深い。割引とは、将来に起こる出来事を現在起こる出来事に比べて軽く評価することを意味する。この割引について、生きる時代が異なるだけで、先行する世代の効用を後続する世代の効用よりも高く評価するのは、おかしいような気がする。他方、数学的には、将来世代の効用を割り引くことにしないと、現世代と将来世代を含む効用の流れを合理的な評価ができないことが示されている。このような緊張関係を解きほぐすことは、興味をそそるエクササイズである。

   このほかにも、ロールズの正義論の議論のうち世代間問題を扱った部分を考察した章(第4章、第13章)、哲学上の世代間問題の難問ともいうべき、パーフィットの非同一性問題に経済学者、哲学者がそれぞれ挑んだ論考(第5章、第10章、第11章)があり、それぞれ熟度に値する考察である。

経済官庁 Repugnant Conclusion

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